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新しく入った人が、その日からChatGPTを使い始める。誰が何を入れて、どこまで任せているのか、社内では誰も把握していない。議事録を丸ごと貼る人もいれば、お客様の名前が入ったメールをそのまま読ませる人もいます。悪気はありません。便利だから、みんな思い思いに使っているだけです。決まりが無いまま、なんとなく回っている。そういう状態が、たぶんあなたの会社にもあります。

8月4日、AnthropicがTino Cuéllarという人を、同社で初めての Chief Global Affairs Officer(渉外の最高責任者)に迎えると発表しました。元はカリフォルニア州最高裁の判事で、技術や国際政策に長く関わってきた人です。仕事は、各国の政府とのやり取りや、AIのルール作りへの関与をまとめること(Anthropicの発表)。つまり、AIを作る側の会社が、道具の中身だけでなく「社会の側の決まりをどうするか」に専任の役員を置くほど、本腰を入れ始めた、ということです。

で、うちの会社は何を持ち帰るか

この人事そのものは、つくばの小さな会社には遠い話に見えます。実際、明日の仕事は何も変わりません。ただ、ここから一つだけ持ち帰れることがあると考えられます。それは「大きなルールは世界の大手が作る。だからうちは、うちの小さな決まりを一枚だけ先に持っておく」という構えです。

理由はこうです。AIをめぐる国の決まりは、これから何年もかけて動きます。中小企業がそれを追いかけても、間に合いません。一方で、社内でその日から効くのは、国の法律ではなく「うちではAIに何を入れていいか」という一行のほうです。お客様の個人情報が入った書類は貼らない。見積の金額は伏せて相談する。この手の取り決めが一枚あるだけで、うっかりの多くは防げると考えられます。

先日の「ChatGPTでログイン」の話(→ 「ChatGPTでログイン」が始まった。社員の私物アカウントで会社の道具に入る前に)で、会社の道具に入るのは会社のアカウントだけ、という一行を決めました。あれと同じで、ルールは長い規程でなくていい。守れる短さのほうが、実際には効きます。

試してみるなら

  • 叩き台はAIに作らせます。こう入力してみてください。「つくばの小さな会社です。社員がChatGPTを仕事で使うときの社内の決まりを、A4一枚に収まる3項目だけで作ってください。専門用語を使わず、やってはいけないことを具体的に書いてください」。自分の会社の言葉で、たたき台が出ます。
  • 中身は3項目まで。たとえば、入れてはいけないもの(お客様の実名・未公開の金額)、使ってよいアカウント(会社で契約したもの)、最後は人が目を通す範囲(送る文・出す数字は本人が確認)。この三つで、事故のほとんどは手前で止まります。
  • うっかりを一段減らす設定もあります。ChatGPTの左下の自分の名前から設定を開き、パーソナライズのカスタム指示に「お客様の実名と金額は伏せて答えて」と一行入れておく。毎回書かなくても、その前提で答えてくれます。

つまずきの先回り

  • 一番の落とし穴は、決まりを作って満足してしまうことです。壁に貼っても読まれません。朝礼で一度読み上げる、新しく入った人に最初に見せる。使われる場面を一つ決めるまでが、この作業だと思ってください。
  • 無料版と有料版で、入れたデータの扱いが違うことがあります。ChatGPTの設定には、やり取りを学習に使わせない項目があります。会社で使うなら、まずそこがどうなっているかを一度見ておくほうが安心だと考えられます。
  • 長い規則を作ると、誰も守りません。禁止事項を10個並べるより、3個に絞って全員が言えるほうが、現場では強いです。増やしたくなったら、その都度足せば十分です。
  • 社内の決まりがあれば法律の面まで安全、というわけではありません。これは事故を手前で減らすための、うちの中の取り決めです。契約や個人情報の細かい話は、必要なときに専門家へ回す前提でいてください。

明日できる小ささ

明日、立派な規程を作る必要はありません。付箋一枚に「お客様の名前と金額は、AIにそのまま入れない」と書いて、ChatGPTを一番よく使う人の机に貼る。決まりの一行目は、それで十分です。世界の大きなルールが固まるのを待つより、うちの一枚が先にある。そのほうが、ずっと早く効きます。

出典(一次情報):Tino Cuéllar が Chief Global Affairs Officer に就任(Anthropic公式)