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見積りの作り方を一番わかっているのが、いつも同じ一人。その人が風邪で休むと、その日の見積りは止まる。頼み方のコツも、確認の順番も、全部その人の頭の中にある。小さな会社で、こういう場面は珍しくない。

AIを入れても、実はこの形はそのまま残る。「ChatGPTでいい感じの文面が作れた」が、その日その人の手柄で終わってしまう。翌週また同じ仕事が来ると、また一から頼み方を考える。道具は新しいのに、回り方は前と変わらない。

9月1日、OpenAIが「AIで伸びている会社は何が違うのか」を調べた記事を公開した(How AI-native companies turn workflows into operating capability)。AIをよく使う上位1割の会社は、平均的な会社より1人あたり8.3倍の量をAIに出させているという。今年1月時点では2.6倍だったから、差は開いている。ただ、記事が面白いのは量の話ではない。伸びる会社は「一度うまくいったやり方を、繰り返せる形にしている」という一点を挙げている。

賢い道具の話ではなく、手順の置き場所の話

ここが、規模を抜きにして真似できるところ。記事に出てくるBasisという会社は、新入社員の初日の受け入れを、前は2時間かかっていたのを30分に縮めた。効いたのは短くなったこと自体より、その手順を一度だけ実演して、次から使い回せる「型」にしたこと。誰がやっても同じ結果になり、その一人がいないと回らない、が消えた。

あなたの会社に置き換えると、これはAIを賢くする話ではない。うまくいったやり方を紙に残す話。ChatGPTに請求書の文面をうまく書かせられた日、その「頼み方」をメモに残す。どんなときに使うか、何を一緒に渡すか、どこまでできたら完成か。この三つを一枚に書いておくだけで、次は別の人が同じ結果を出せる。特に効くのは三つ目の「完成の合図」で、ここが曖昧だと、AIが出した文をそのまま送っていいのか毎回迷うことになる。RASHINの見立てでは、小さな会社にとっての「AI活用」の正体は、たぶんこれです。性能ではなく、手順の置き場所。

もう一つ、Clayという会社の例も同じ形をしている。営業担当が毎晩1時間かけていたメールの仕分けを、決まった段取りに乗せ替えて約1時間浮かせた、とある。ここでも新しい魔法の道具は出てこない。今ある材料を、決まった順番に並べ直しただけ。だから小さな会社でも、真似する入口は道具の購入ではなく、段取りを一つ決めることになる。

来年には、AIが上手い会社とそうでない会社の差は、道具の性能の差ではなく「やり方を残しているかどうか」の差として出てくると考えられます。

試してみるなら

  • 直近でAIにうまく手伝ってもらえた仕事を一つ思い出す。そのときの頼み方をコピーして、テキストファイルに貼っておく。次に同じ仕事が来たら、また貼って使う。それだけで「型」の一枚目になります。
  • 型を整えたいときは、ChatGPTにこう入力してみてください。「次のお願いの文を、他の人も使い回せるように整えてください。(1)どんなときに使うか (2)一緒に渡す材料 (3)完成の合図、の三つを見出しにして、埋めてください」。さっき使った頼み方を下に貼れば、清書された下書きが返ってきます。
  • 無料のChatGPTでできます。有料プランや専用の道具は要りません。まずは一つ、残すところから始める。

つまずきの先回り

  • 「型」は作って終わりではない。記事のBasisも、繰り返し出る質問や例外が出れば、次の期の前に型を直せる。最初から完璧を狙うと動き出せない。8割で始めて、つまずいた所だけ後から足す。
  • OpenAIの記事に出てくるCodexや「エージェント」は、各社が自社の業務に組み込んでいる専用の仕組みで、そのまま小さな会社に必要なわけではない。真似するのは道具ではなく、「残して繰り返す」という考え方の方です。
  • 頼み方をメモに残すとき、取引先の名前や具体的な金額はそのまま書き込まない。型は空欄で作り、実際の中身は使うときに入れる。社内で共有する前に、一度この目で中身を見ておく。

明日できる小ささは、これ一つ。今日AIにうまく手伝ってもらえたら、その頼み方を消さずに、どこかへ一行残しておく。伸びる会社がやっているのは、たぶんその積み重ねの先です。

出典(一次情報):How AI-native companies turn workflows into operating capability(OpenAI公式)