会社でChatGPTを使い始めると、いつの間にか「管理する人」が生まれます。総務の人が片手間で、誰にアカウントを配ったか、誰がもう上限に近いか、誰が「もっと使わせて」と言ってきたかを、頭の隅で覚えている。その人が休むと、途端に誰も分からなくなる。分かっているのは本人だけ、という状態です。
そのAIの管理を、AIに聞けるようにする道具が出ました。OpenAIは8月25日、会社向けの「ChatGPT Work」と、開発用の「Codex」に付ける Admin plugin を発表しました。管理者が一つの会話の中で、状況を質問し、中身を確かめ、許された範囲の変更を行い、結果まで確認できる。これまで画面をいくつも渡り歩いていた作業を、話しかける形に寄せた、という発表です。
管理は消えないが、探し回る手間は減る
発表を、つくばの中小企業の机の上に置き直してみます。ChatGPT Workを何人かで使っている会社なら、管理の仕事はいつも同じ形をしています。誰がメンバーか。誰の使用量が上限に近いか。誰の権限がどうなっているか。使いすぎの申請を、通すか止めるか。OpenAIはこれらを、分析画面と設定画面とレポートの間を行き来しながらやる作業だと書いています。行き来する分だけ遅くなり、人によってやり方がぶれる、とも。
Admin pluginがやろうとしているのは、その行き来を一本の会話にまとめることです。「今月、上限に近づいているメンバーは誰か」と聞けば使用状況が返り、そのままメンバーを足したり外したり、上限を調整したり、申請を通したり止めたりできる、と説明されています。複雑な指示文を書き分けたり、道具を切り替えたりせずに、です。
RASHINが大事だと考えるのは、発表の中の一文です。このpluginは「使う人がもともと持っている役割と権限の中で動き、より広い権限を与えるものではない」。つまり、管理を楽にする道具であって、権限を配る道具ではない。担当者ができることの範囲は変わらず、その範囲の中を速く歩けるようになる、という設計です。ここが曖昧だと、管理の道具はかえって怖い。OpenAIは、変更ごとに「何を頼み、実際に反映されたか、何が変わったか」を管理者が見られるとも書いています。
自動化の話も添えられています。使いすぎの申請をSlackやMicrosoft Teamsに流し、権限を持つ人がいつもの道具の中で通すか止めるかを決められる。OpenAI自身のIT部門では、報告時点で、Slack上のChatGPT Workのやりとりが、問い合わせのおよそ45%を処理していると書かれています。問い合わせの量がおよそ2倍に増えても回った、とも。これは大きな会社の数字なので、そのまま持ち込む話ではありません。ただ「管理の一次受けをAIに寄せると、担当ひとりでも量に押し負けにくくなる」という方向は、規模が小さいほど効きます。担当が一人しかいない会社ほど、その一人が探し回る時間が惜しいからです。
試してみるなら
前提として、これはChatGPT Work(会社向けの契約)に付ける道具です。個人のChatGPTでは出てきません。自社がChatGPT Workを使っているなら、手順はOpenAIの説明どおり短いものです。まずChatGPTのワークスペース設定でpluginを有効にし、次にChatGPT Workのプラグイン一覧(Plugins directory)から入れる。Web版でもデスクトップアプリでも入れられる、とされています。
入れたら、いきなり変更をかけず、まず「見るだけ」の質問から始めるのが安全です。たとえばこう入力してみてください。「今月、使用量が上限に近いメンバーを一覧で出して。まだ何も変更しないで」。返ってきた一覧を見て、事実が自分の把握と合っているかを確かめる。そこで初めて、「このメンバーの上限を少しだけ上げて」と、一件ずつ頼む。最初の一週間は、この「聞く→確かめる→一件だけ動かす」の順で慣らすと、事故が起きません。
つまずきの先回り
一つ目。繰り返しになりますが、個人向けの契約では使えません。「自社のChatGPTにも出るはず」と探して見つからないのは、契約の種類が違うからです。まずは自社がどの契約かを確かめてください。
二つ目。この道具は権限を広げません。あなたにもともと無い操作は、pluginに頼んでもできない、ということです。「管理者に頼めばできたことが、自分だと弾かれる」場面は、pluginを入れても弾かれたままです。楽になるのは、あなたが元からできることの手数だけです。
三つ目。会話で動かせるからこそ、影響の大きい操作は一呼吸置く。OpenAIは、影響の広い操作は反映前に管理者が確認できる、と書いています。この確認を飛ばさないこと。「メンバー全員の権限をまとめて変える」ような指示は、返ってきた内容を目で読んでから通す。SlackやTeamsへの申請の振り分けも、最初は誰に流れるかの設定を一度自分の目で確かめてから任せるのが安全です。
会社のAIは、配って終わりではありません。誰が使い、いくら使い、次に誰が詰まるか。その把握を一人の記憶に預けている会社は、その一人が休んだ日に止まります。明日の一歩は、道具を入れることより前に一つあります。今チームの中で、ChatGPT Workの席を実際に持っているのは誰か、上限に近い人はいるか。この二つを、紙一枚に書き出してみる。管理をAIに聞く前に、聞くべき問いが自分の中で言葉になっているか。そこからです。
出典(一次情報):Introducing the Admin plugin for ChatGPT Work and Codex(OpenAI公式)