朝礼で「これからはAIを使っていこう」と号令をかけた。数週間たって、実際に毎日触っているのは若手が一人だけ。ほかの人は、忙しさに紛れて元のやり方に戻っている。よく見る景色です。道具は配ったのに、学ぶ場所を配っていない。ここが抜けると、AIは「詳しい人の趣味」で止まります。
Claudeを作るAnthropicが、その学ぶ場所を日本語で用意しています。名前はClaude Academy。AIをこれから探る人、Claudeを触りはじめた人、チームへの導入を考えている人、それぞれに向けた教材がまとまっています。会話で考えを整理したり文書を作ったりするClaude.ai、タスクごと渡して仕上がりを受け取るClaude Cowork、開発に使うClaude Codeなど、製品ごとに学ぶ道筋が分かれています。チームのチャットにClaudeをタグ付けして作業を割り振るClaude Tag、APIで自社の仕組みに組み込むClaude Platformまで、段階がそろっています。
で、あなたの会社はどうするか。全社員に一斉に「これで勉強しておいて」と投げるのは、たぶんうまくいきません。学ぶ場所ができたことの値打ちは、別のところにあります。これまで社内でAIを教えられるのは「詳しい一人」だけで、その人の手が空かないと全部止まっていました。外に、順番に並んだ教材ができた。これで、教える係を一人の頭の中から外に出せます。詳しい人がいなくなったら誰も分からなくなる、という状態から一歩離れられる。人が増えても、同じ順番で辿れる道が残ります。
RASHINの見立てでは、最初に効くのは製品の操作より「AIそのものの土台」です。Academyには「AI活用力」という基礎のコースがあり、4Dフレームワーク(委任力、記述力、評価力、倫理的責任)という考え方で、AIに何を任せて何を任せないかを扱います。AIが得意なことと苦手なことの地図を先に持っておくと、現場で「なぜかうまくいかない」に振り回されにくくなります。任せてよい仕事と、人が自分で確かめるべき仕事を分ける。その線を引く練習が、4Dでいう「委任」と「評価」にあたります。
試してみるなら
まず経営者自身が、一人で一本だけ通してみてください。academy.claude.comを開き、「AIの4つの特性」という7分のチュートリアルから入るのが軽いです。7分なら、昼休みの後半で終わります。手を動かす前に、地図を眺める感覚です。
そのうえで、社内で一番AIに前向きな人を一人選び、こう頼んでみてください。「『AI活用力』のコースを一週間で見て、自分たちの仕事で使えそうな所を3つだけ、箇条書きで教えて」。全部を理解させようとしない。3つに絞るのが、続けてもらうコツです。
出てきた3つを、次の朝礼で本人の口から共有してもらう。教材のリンクを配るだけより、人が自分の言葉で話したほうが、社内に残ります。うまくいけば、その一人が次の人に教える側に回ります。教える係を、外の教材と社内の一人で分け持つ形です。
つまずきの先回り
Academyで学べるのは、あくまでClaudeという特定の道具の使い方が中心です。あなたの会社がChatGPTやGeminiを主に使っているなら、「AI活用力」のような道具に依らない基礎の部分だけをつまみ食いするのが現実的です。製品ごとのコースは、その製品を実際に触れる状態でないと、手を動かして学べません。
ライブのウェビナーも用意されていますが、こちらは英語で、時間帯も海外に合わせてあります。日付だけ見て予定に入れると、始まるのが日本の深夜だった、という落とし穴があります。録画や文字の教材は自分の都合で進められるので、まずはそちらからで十分です。
もう一つ。学ぶ場所ができても、社内で「何にAIを使ってよくて、何は駄目か」の線引きがなければ、学んだ人ほど迷います。以前に書いた社内ルールを一枚だけ作る話(→ Anthropicが渉外の責任者を置くと発表した。RASHINが考えるのは、AIの社内の決まりを一枚だけ作る話)も、教材と並べて置いておくと安心です。
明日できる小ささは、7分のチュートリアルを一本、あなた自身が見ることです。社員に配るのは、その次でかまいません。学ぶ場所は、もう外にそろっています。あとは、誰が最初の7分を使うかだけです。
出典(一次情報):Claude Academy(Anthropic公式)