夕方、次の仕入れ先を選ぶとき、あなたはどこで比べますか。以前なら検索して、上から何件か開いて、見比べていました。最近は違う人が増えています。ChatGPTに「こういう条件で、どこがいい?」と聞いて、候補と理由をまとめてもらう。決めるまでの調べ物が、一つの画面の中で終わる。買う側のこの動きは、売る側のあなたにも跳ね返ってきます。
OpenAIが8月31日、ChatGPTの広告事業について節目を発表しました(A milestone in expanding access to AI)。ChatGPT Adsは公開から200日足らずで、年換算の売上ペースが10億ドルに達したといいます。広告主は数万社、提供は40か国以上。そして本日中に、広告主が自分でAds Managerから広告を出す仕組みが、インド・ヨーロッパ・中東・北アフリカで始まります。この自前で出す入口は、5月に中小企業へ開かれ、いまや事業の相応の割合を占めるとされています。
一つ、先に線を引いておきます。この「自分で出す」入口の今回の対象地域に、日本は入っていません。だからツクバの会社が今日から広告を出せる、という話ではない。ここで持ち帰るのは、広告そのものより、その手前の変化です。人がものを選ぶ場所が、検索結果の一覧から、AIとの会話の中へ移りつつある。OpenAIは発表の中で、ChatGPTが「候補を絞り、基準を決め、行動に近づく」場になっていると書いています。つまり、あなたの会社が見つけてもらえるかどうかは、AIがあなたを正しく言葉にできるかに、少しずつ左右されていきます。
道具としても、この広告の仕組みは育ってきています。発表によれば、成果に合わせた入札や、地域や商品リストでの絞り込み、独自の顧客層の指定といった機能がそろい、広告主が狙った相手に届けやすくなっているといいます。売る側にとっては、いずれ使える道具が一つ増える、という理解でよさそうです。
広告の作法についても書かれています。ChatGPTの広告は常にはっきりと印が付き、回答とは分けて表示される。広告は回答の中身に影響しない。広告主は利用者の私的な会話を見られない。個人に合わせる度合いは、利用者側で調整できる。ただしRASHINの見立てでは、道具を使う前に効いてくるのは、AIに拾われる「素の情報」の整え方のほうです。まだ日本で自前購入ができない今の期間は、その足場を整える時間だと考えられます。
試してみるなら
まず、今のChatGPTがあなたの会社をどう説明するかを見てください。無料の範囲でできます。ChatGPTを開いて、こう入力します。「『(あなたの業種、例: つくば市の金属加工の会社)』を探しています。候補を挙げて、それぞれの得意分野と、選ぶときの基準を教えてください」。自社が挙がるか、挙がるなら説明が合っているかを確かめます。
次に、自社サイトの会社紹介を一段だけ手直しします。何を扱う会社か、どこが強みか、対応できる地域はどこか。この三つを、飾らずに一文ずつ書く。AIは飾り言葉より、事実の並びを正しく拾います。海外で広告を出したい取引がある場合に限り、ads.openai.comで仕組みを見ておくのもよいですが、日本の自前購入が来てからで間に合います。
つまずきの先回り
一つ目。くり返しになりますが、Ads Managerからの自前購入の今回の対象は、インド・ヨーロッパ・中東・北アフリカです。日本は含まれていません。国内の広告出稿としてもう使える、と社内に伝えると齟齬が出ます。
二つ目。発表にある成果の例、たとえば「28日で広告費の3倍の売上」「広告経由の8割超が新規客」は、ある広告主とある協力会社が報告した個別の数字です。誰がやっても同じ結果になる約束ではありません。効果の見込みとして話すときは、この一段を落とさないでください。
三つ目。広告と回答の混同です。ChatGPTの広告は印が付いて回答と分かれる設計ですが、読む側は急いでいると見落とします。社員がChatGPTで調べ物をするなら、「印の付いた枠は広告」という一言だけ、先に共有しておくと安全です。
明日できる小ささは、広告の申し込みではありません。ChatGPTに一度、自分の会社を尋ねてみる。返ってきた説明のズレを、会社紹介の一文で直す。顧客がAIの中で決める時代の準備は、その一手から始まります。