事務所の引き出しに、去年の見積書が一枚眠っていないでしょうか。問い合わせメールの一次返信をAIに任せませんか、という提案。金額を見て「まだうちには早い」と言って、そのまましまった紙です。あの判断は、あの時点では妥当だったと思います。ただ紙のほうは、去年の値段のまま止まっています。

7月21日、GoogleがGeminiの新しいモデルを三つ発表しました。中心になるのはGemini 3.6 Flashで、ふだんづかいの主力にあたる型です。同じ仕事をさせたときに書き出す文字の量が前の世代より減り、一回あたりの費用も下がりました。あわせて、もっと軽くて速いGemini 3.5 Flash-Liteも出ています。残りの一つは政府や一部の相手だけに配られる防犯向けの型なので、こちらは横に置いておいて構いません(Googleの発表)。

値段の話は、そのまま速さの話でもある

AIの利用料は、やりとりした文字の量で決まります。人間でいえば、口数で料金が変わる通訳のようなものです。今回の新しい型は、同じ質問に対して前より短く答えるようになりました。答えが短ければ料金が下がり、返ってくるまでの時間も縮みます。

軽いほうのGemini 3.5 Flash-Liteは、一秒に三百字を超える勢いで文字を出します。画面を見ていて、待っている感覚がほとんどありません。この「待たされない」は地味ですが、社内で使ってもらえるかどうかの分かれ目になります。三十秒待つ道具は、二週間で使われなくなります。

つくばの会社にとって、これは何を意味するか

ここからが本題です。この発表そのものは、Geminiアプリを開いて使う分には何も変わりません。裏側の型が入れ替わっただけで、月々の支払いも操作も同じです。意味が出てくるのは、外注や自社での仕組みづくりを考えている場合です。

去年から今年にかけて、AIの費用は同じ性能なら下がる方向で動いてきました。今回もその線の上にあります。ということは、半年前に「割に合わない」として見送った案件の前提は、今は変わっている可能性があると考えられます。断ったのは金額であって、やりたいことではなかったはずです。

たとえば、問い合わせの仕分け。たとえば、現場写真からの日報の下書き。一件ごとの単価が下がると、それまで人がやったほうが安かった仕事の線引きが、少しだけ動きます。大きく動くとは書きません。動くのは線引きの位置だけで、判断するのは相変わらず社長です。

試してみるなら

まず、支払いのいらない範囲から始められます。Geminiアプリを開いて、新しくなった主力の型で一度試してみてください。去年見送った案件の内容を、そのまま相談相手にぶつけるのが早いです。

「うちは社員十二名の建設会社です。問い合わせメールが一日十五件ほど来ます。一次返信をAIに下書きさせたい場合、どこまでを自動にして、どこから人が見るべきか。区切り方の案を三つ、それぞれの短所つきで出してください」と入力してみてください。

見積書が手元にあるなら、その写真を撮って一緒に貼るのも有効です。画面下の入力欄の左にある「+」から写真を選べます。そのうえで「この提案の中で、いま自社で無料の道具だけでも試せる部分はどれですか」と聞くと、丸ごと外注する前に自分で確かめる範囲が見えてきます。

つまずきの先回り

一つ目。新しい型が自分の画面に来ているとは限りません。この手の入れ替えは何日かかけて順に配られます。入力欄の上あたりに出る型の名前を一度見ておくと、話が食い違いません。

二つ目。今回発表された安さは、開発者向けの利用料の話です。月額のGeminiアプリを使っている分には請求書は変わりません。「安くなったらしいので値引きを」と外注先に言うと、話が噛み合わなくなります。伝えるなら「今の前提でもう一度見積もってほしい」です。

三つ目。防犯向けのGemini 3.5 Flash Cyberは、限られた相手だけの試験提供です。「Googleが弱点を見つけて直してくれる型を出した」という話を聞いても、自社のパソコンには関係がありません。念のため書いておきます。

引き出しの見積書を、今日一枚だけ出してみてください。捨てるのではなく、日付を見るだけで構いません。半年より前の日付だったら、それは今の値段ではないという印です。

出典(一次情報):Introducing Gemini 3.6 Flash, 3.5 Flash-Lite, and 3.5 Flash Cyber(Google公式ブログ)