「この数字、結局どうなってるんだ」。そう思ってAIに聞くと、長い文章がずらっと返ってくる。要点を探して読み飛ばし、わからないまま画面を閉じる。資金繰りでも仕入れの比べ物でも、文字の壁で手が止まる場面は多いはずです。
Googleは8月24日、Geminiアプリが質問や込み入った話題を、その場で動く図や表に変えて返せるようになったと発表しました。これまで答えは文章と動かない図が中心でした。これからは、質問に合わせて作った表やグリッド、簡単なシミュレーションが答えに混ざります。Googleは例として、DNAの立体を回して見る、振り子がエネルギーをやり取りする様子を眺める、といった使い方に加えて、資金の減り方(cash burn)を動く表で学ぶ、という仕事寄りの例も挙げています。すでにRapid ReleaseとScheduled Releaseのドメインで使えるとのことです。くわしくはGoogleの案内にあります。
理科の実験より、触れる表
RASHINが見るのは、動く分子ではなく、この「動く表」の一点です。会社で毎日ぶつかるのは、数字と条件の絡まりだからです。月ごとの入りと出、値上げした場合としない場合、在庫が何日でなくなるか。こうした話は、文章で長く説明されるより、表にして数字を差し替えながら眺めたほうが早くつかめると考えられます。発表でもGoogleは、資金の減り方を動く表で学ぶ例をわざわざ挙げていました。理科の実験の隣に、いきなりお金の話が並んでいるわけです。
なぜ「触れる」が効くのか。読むだけの答えは、頭の中で数字を組み直す手間が要ります。表で目の前に並んでいれば、「この一行を変えたらどこが動くか」を、指で追いながら考えられる。Geminiに「表にして見せて」と頼むと、その入口までは一息で行けます。会議の前に自分の頭を整える、社員に口で説明する代わりに一枚を見せる。そういう下ごしらえの道具として、と言えそうです。
ただし、これは電卓や会計ソフトの代わりではありません。あくまで、話をのみ込むための下ごしらえです。出てきた表の数字は、元の資料と突き合わせてから使う。そこは我々のほうで変わらず持っておく手順です。
試してみるなら
Geminiアプリの入力欄に、次のように頼んでみてください。数字は自分の会社のものに置き換えます。
- 「この3か月の売上と経費を、月ごとの表にして見せて。合計と差額も出して」
- 「この商品の値上げ前と値上げ後を、並べた表で比べたい」
- 「在庫が今のペースで何日もつか、簡単なシミュレーションで見せて」
- 「この受注から出荷までの流れを、順番のわかる図にして見せて」
うまく図が出ないときは、英語の「show me」や「help me visualize」を頭に付けても動きます(発表元が挙げている言い回しです)。会社でGoogle Workspaceを使っていれば、追加の申し込みなしで試せる範囲です。
つまずきの先回り
- この機能はGoogleのGeminiアプリのものです。会社の管理者がGenerative AIの設定でGeminiを止めていると、そもそも出てきません。使えないときは情シスか管理者に、Workspace管理コンソールの設定を確かめてもらってください。
- 利用者側に、この機能だけをオン・オフする切り替えはありません(発表にそう書かれています)。表が出ないときは、機能ではなく設定のほうを先に疑うと早いです。
- 使い過ぎには上限があるとされています(usage limits)。連発すると一時的に止まることがある、くらいに構えておくと安全です。
- 一番だいじな一点。表がきれいに出ても、中の数字が正しいとは限りません。見た目が整うほど、正しそうに見えてしまうのが落とし穴です。会社の判断に使う数字は、元の資料と照らしてから使ってください。
明日できる小ささで言えば、今日の会議で使った数字を一つ、Geminiに「月ごとの表にして」と頼んでみる。それだけです。うまくいけば、次からは同じ数字を人に説明するとき、口で言うより一枚見せたほうが早い、と気づくはずです。読む答えが、触れる答えに変わる感触を、まず一回だけ味わってみてください。道具が変わっても、判断するのは我々のほうだ、という順番は変わりません。
出典(一次情報):Google Workspace Updates(公式ブログ)