月末になると、同じ画面を何度も開きます。顧客の台帳に新しい連絡先を一件ずつ写し、フォームに同じ住所を打ち込み、カレンダーの予定を並べ替える。頭はほとんど使っていないのに、手だけが塞がっていく。この「手だけが塞がる時間」を誰かに渡せたら、と思ったことはないでしょうか。
その渡し先が、少し変わりました。OpenAIが新しい最上位モデル GPT-6 Astra を公開しました。本日は一部の組織にだけ提供を始め、数日のうちに ChatGPT の Plus・Pro・Business・Enterprise の全ユーザーへ広がる予定だと書かれています。使う分は今のプランの枠内に含まれ、足りなければクレジットを買い足せるようになります。OpenAIはこれを、世界で最も賢く、最も意図に沿うモデルだと説明しています。
ベンチマークの点数自慢は、今日は脇に置きます。つくばの中小企業にとっての変わり目は一つ、「コンピュータ操作」です。発表がいちばん紙幅を割いているのがここでした。AIが自分でブラウザやソフトを動かす力です。オンラインのフォームを埋める。CRM(顧客管理のソフト)の記録を更新する。カレンダーを整理する。ネットで調べて、メールや文書エディタの中に要約の下書きを作る。これまで人が画面の前で手を動かしていた雑務を、モデルが受け持てるようになった、という内容です。
もう一つ、指示があいまいなときの振る舞いも変わりました。結果が変わらない細かい抜けは文脈で埋め、答え次第で結果が変わる所だけ、焦点を絞って聞き返す。人が返事をしなければ無難な前提で進み、影響の大きい判断は人の入力を待つ、とあります。丸投げした仕事が「途中で全部止まる」か「勝手に突き進む」かのどちらかだった頃より、任せやすくはなっています。
発表にはもう一点、書類仕事の話もあります。あなたのテンプレートや書き方の様式に沿って、文書やスライド、表を作るのが得意になった、とのことです。必要な情報だけを選んで載せ、関係のない中身は繰り返さない、とも書かれています。見積書のひな形や社内の報告フォーマットのように「毎回この形」が決まっている書類ほど、下書きを任せる余地が生まれます。
RASHINの見立てでは、だからといって今日いきなり全部を任せる必要はありません。道具が強くなったのは確かでも、あなたの会社の事情を知っているのは、まだあなただけです。強い道具ほど、渡す前に「何を渡すか」を決めておく手間が効いてきます。
試してみるなら
任せられそうな雑務を一つだけ選び、そのまま貼れる頼み方にしておくのがいちばん早いです。たとえば問い合わせメールの処理なら、こう入力してみてください。「このメールの内容を、顧客台帳に追記する下書きにしてください。会社名・担当者名・要望の三つに分けて、表の形で出してください」。会社名や要望のような、後の作業を左右する項目を先に指定しておくと、聞き返しが減ります。
モデルは数日のうちに、入力欄の上あたりにあるモデル名の一覧へ GPT-6 Astra(Pro・Business・Enterprise では GPT-6 Astra Pro も)として出てきます。名前をクリックして選んでから頼むと、この新しいモデルで動きます。最初はダミーの一件で頼み方を固めてから、本物のデータに移してください。
つまずきの先回り
Enterprise プランは、提供開始の時点では既定でオフだと明記されています。管理者が自社のワークスペースで有効にするまで、社員の画面には出てきません。「自社だけ出てこない」の多くはこれです。
「数日のうちに」は予定であって、全員が同じ日に切り替わるわけではありません。今日まだ出ていなくても、少し待てば順に広がります。
APIでトークンごとに払う人向けの価格は、入力が100万トークンあたり10ドル、出力が100万トークンあたり50ドルと案内されています。これは月額のサブスクとは別の話です。ChatGPTを月額で使う範囲なら、この単価は関係しません。
サイバー面の力が大きく上がった一方で、Astraは脆弱性の実証コードを作るような高度な攻撃の依頼は断る、と書かれています。安全寄りに倒すため、正当な作業でも途中で止まって確認を求められることがある、ともあります。止まったら、それは壊れたのではなく、確認待ちだと思ってください。
明日できるのは、大きな決断ではありません。今週いちばん「手だけが塞がった」作業を一つ、紙に書き出しておく。新しいモデルが自分の画面に出てきた日に、その一件から頼んでみる。始まりはそれで十分です。
出典(一次情報):GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(OpenAI公式)