夜、事務所に一人残って、ダウンロードした補助金の公募要領を開きます。PDFで四十ページ。制度の趣旨、対象者の要件、対象になる経費、申請の手順。どれも大事そうなのに、読み進めるほど、自分の会社に関係するのがどこなのか分からなくなる。三ページ目で、まぶたが重くなってくる。補助金を調べたことのある人なら、覚えのある夜だと思います。
つらいのは、文章が難しいこと以上に、自分に関係する所が埋もれていることです。使える経費はどれか、上限はいくらか、締切はいつか。知りたいのはその数行なのに、制度の背景説明や、他の業種向けの条件の中に紛れている。全部きちんと読もうとすると、それだけで夜が終わる。結局、あとで読もうと閉じて、そのまま締切が過ぎる。よくある話です。
長い要領がしんどいのは、量ではなく在りかが分からないから
公募要領が重いのは、ページ数のせいだけではありません。自分に必要な情報が、どこにあるか分からないのが、本当のしんどさです。四十ページのうち、あなたに関係するのは、たぶん数ページ。残りは、他の立場の人向けか、制度のたてつけの説明です。
だとすれば、最初にやるべきは通読ではありません。自分に関係する数行がどこにあるかを、先に見つけること。この在りかを探す作業は、AIが得意とするところです。長い文章から、決まった項目を抜き出して並べる。人が眠くなる作業を、数十秒でこなします。
AIに任せられるのは、抜き出しと噛み砕き
やり方はこうです。公募要領のPDFやテキストをAIに渡して、決まった項目を箇条書きで抜き出してください、と頼む。対象になる会社の条件、使える経費、補助の上限、締切、出す書類。この五つが並ぶだけで、自分に関係あるかどうかの当たりがつきます。
難しい言い回しも、噛み砕いてもらえます。「対象経費の欄を、専門用語を使わずに言い直して」と頼めば、堅い条文が、ふだんの言葉になります。そこで初めて、原文の該当ページを開いて、細かい条件を自分の目で確かめる。全部読んでから探すのではなく、当たりをつけてから読む。順番が逆になるだけで、かかる時間が変わります。
比べる作業にも向いています。似た制度が二つあって迷うとき、両方の要領を渡して、対象経費と上限がどう違うかを表にして、と頼む。並べて見せてくれるので、どちらが自社に合うかの見当が早くつきます。あくまで見当をつけるための下ごしらえで、決めるのは自分ですが、入り口の霧はだいぶ晴れます。
試してみるなら
ひとつ目。公募要領のPDFを用意します。ChatGPTやGeminiには、ファイルを添付できるボタンがあります。そこからPDFを上げて、こう頼みます。「この公募要領から、対象者の条件・対象経費・補助上限・締切・必要書類の五つを、箇条書きで抜き出してください。書いていない項目は、書いていないと答えてください」と入力してみてください。
ふたつ目。抜き出した中で、気になる項目を深掘りします。「対象経費のうち、ソフトウェアの費用は含まれますか。要領のどこに書いてあるかも教えて」と聞くと、該当箇所の見当がつきます。あとは原文でそこを開いて確かめるだけです。
みっつ目。用語が難しいときは、「今の要点を、はじめての人向けにやさしく言い直して」と頼みます。堅い言葉が、読める日本語に変わります。無料の範囲でも、PDFの読み込みはできることが多いです。
つまずきの先回り
来週あたり引っかかりそうな点を、先に書いておきます。
まず、要約は原文の代わりにはなりません。締切の日付、補助の金額、対象の条件。この三つは、元の公募要領で確かめてください。AIは、書いていない数字をそれらしく埋めることがあります。申請にかかわる数字を、要約だけで判断しないこと。
次に、出せるかどうかの判断を、AIにさせないこと。AIは、この制度に申請できます、と言い切ってしまうことがありますが、それはあくまで文章の当てはめです。対象になるかの最終判断や、うまくいくかどうかの見込みは、AIに聞くものではありません。制度の事務局に問い合わせるのが確実です。
最後に、古い要領との取り違えです。補助金は年度で条件が変わります。手元のPDFが今年度のものか、日付を確かめてから読み込ませてください。去年の要領で準備を進めると、後で全部やり直しになります。
明日できる小ささ
次に補助金の要領を開くとき、一ページ目から読み始めるのをやめてみてください。先にAIへ渡して、対象・経費・締切の当たりだけ、つけてしまう。全部読むのは、そのあとでいい。眠くなる通読を、探し物に変えるところから始めます。