午後3時、いつもの社員から内線が来る。またChatGPTが止まりました、と。見に行くと、画面には上限に達したという表示。その人は一日中、下書きを頼み、資料を整え、問い合わせの返信を書いている。会社でいちばん使っている一人だ。ほかの数人は週に何度か触る程度で、上限にぶつかったことはない。困っているのは、だいたいいつも同じ顔ぶれ。
そのちょうど痛いところに、OpenAIが8月10日、ChatGPT BusinessにPremium席という新しい席の種類を用意した(発表)。標準の席より5倍多く使えて、5時間ごとの利用の上限が外れる。値段は一席あたり月125ドル、年払いなら月100ドル。会社の同じ作業場の中で、席の種類だけを一段上げられる、という形になっている。
で、うちの会社はどうすればいい。ここで効いてくるのが「席」という言葉です。今までは、上限にぶつかる一人のために全員のプランを上げるか、その一人に我慢してもらうかの二択に近かった。この発表は、その真ん中に道を作ったと考えられます。詰まっているのが五人のうち一人なら、その一人だけを上位の席に移せばいい。残りの四人は今の席のまま。会社全体の月額を大きく動かさずに、いちばん手が止まっていた人の詰まりだけをほどける、という話になります。
裏を返すと、この道具が活きるのは、誰が詰まっているかを会社が把握できている時だけです。全員をなんとなく上げてしまうと、5倍の余裕を使い切らない席にお金を払うことになる。逆に、本当に一日中使っている人を標準席のままにしておくと、その人は午後の大事な時間に手を止め続ける。どちらももったいない。まず見るべきは、性能の数字ではなく、自分の会社の中で誰の手がいつ止まっているか、という現場の事実のほうだと考えられます。
言い方を変えると、これは道具を新しくする話ではなく、今ある道具の配り方を変える話です。同じChatGPTを、使う人の濃さに合わせて席で色分けする。よく使う人には広い席、たまに使う人には普通の席。会社の中の使われ方に、費用の形をそっと寄せていく作業に近い、と考えられます。だから判断の起点は、新しい機能の説明書ではなく、先月の自分の会社の使われ方のほうに置くのが素直です。
試してみるなら
- まず、社内でChatGPTを一番使っている人に一言聞いてみてください。「上限に達しました、という表示が最近出た?どのくらいの時間帯?」。出るなら、その人が上位の席の候補です。出ないなら、今のプランで足りている合図。席を上げる前に、この確認が一番安い判断材料になります。
- ChatGPT Businessを契約している場合は、管理者の設定画面(Settings の中の Members や Billing のあたり)を開いて、席の一覧と種類を見てみてください。誰が標準席かが並んで見えます。ここが席を移すときの入り口になります。
- 個人のChatGPTでよく上限に当たる人には、そのまま貼れる頼み方の工夫も渡しておくと効きます。「この作業を三つに分けて、一つずつ順番に出して」と入力してみてください。長い依頼を一度に投げるより、途中で止まりにくくなります。席を上げる前の応急処置として。
つまずきの先回り
- これはChatGPT Business向けの席です。個人で使っているPlusやGoの契約には、この上位席は出てきません。会社としてBusinessをまだ契約していないなら、まずそこが前提になります。個人アカウントを寄せ集めて使っている状態なら、席を分ける話の前に、会社の契約へ一本化するほうが先です。
- 5時間の上限が外れる、の意味を取り違えないこと。これは何時間でも使い放題という約束ではなく、5時間ごとに区切られる標準の枠が外れる、という意味です。重い作業を長く続ける人ほど効きますが、たまに使う人には差が出にくい。人によって効き目が違う道具だと思って選んでください。
- 発表には、8月20日までに待機リストへ申し込むと席あたりの利用枠がもらえる、という期間限定の案内も付いています。日付が近いので、上げる可能性があるなら、決めるより先に条件だけ今日のうちに見ておくと後で慌てません。ただし、割引があるからと必要のない席まで増やすのは本末転倒です。詰まっている人の数だけ、が基本の物差しになります。
明日できる小ささとして、今日はまず一人に聞くところまでで十分です。最近、ChatGPTが上限で止まった?。その答えが返ってきてから、席を動かすかどうかを考えればいい。道具の値段表より先に、自分の会社の午後3時を見に行く。そこから始めれば、間違った席にお金を払わずに済みます。
出典(一次情報):Premium seats are coming to ChatGPT Business(OpenAI公式)