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会議が終わって、席に戻る。ホワイトボードには丸と矢印、手元のノートには走り書き。「あとで議事録にしよう」と思って、夕方にもう一度開く。すると、何が決まって、誰が何をやることになったのか、線がつながらない。会議中はわかっていたはずの話が、三時間たつと霧の向こうです。この「あとで書こう」が、たいてい書かれないまま次の会議を迎えます。

議事録でつまずく理由は、だいたい二つです。一つは、全部を残そうとして時間が足りなくなること。発言をそのまま書き起こすと、A4で何枚にもなって、読む人もいなくなります。もう一つは、逆に誰も書かないこと。決まったことが口約束のまま消えて、次の会議が「あれ、どうなった」から始まる。どちらも根っこは同じです。何を残すか、の型が決まっていない。

会議の記録で本当に要るのは、話の全文ではありません。決まったこと、決まらなかったこと、誰がいつまでに何をやるか。この三つだけです。裏を返すと、雑談も、言い回しも、脱線も、残さなくていい。ここを先に決めておくと、議事録はぐっと軽くなります。そして、この「決まったことだけ抜き出す」作業は、AIが得意とするところです。

全部書くのを、やめる

やり方は単純です。会議中は、きれいな文にしようとせず、聞こえた通りのメモを残す。箇条書きでいい。書けなければ、スマホの録音でもいい。会議が終わったら、そのメモか録音の文字起こしを、AIに渡す。そのとき、決まった型を一緒に渡します。型があると、AIは毎回おなじ形で返してくれる。

型は、三つの箱でできています。「決まったこと」「持ち越し(次回に回すこと)」「宿題(誰が・いつまでに・何を)」。この三つに振り分けてもらうだけで、A4何枚のメモが、一枚に収まります。大事なのは、毎回おなじ型を使うことです。形がそろっていると、先月の議事録と今月のを並べたとき、宿題がちゃんと片づいたかを目で追えます。

たとえば、社内の定例会を思い浮かべます。展示会に何を出すか、見積もりの締め切りをいつにするか、来客の対応を誰が回すか。一時間しゃべって、決まったのは実のところ三つか四つ、というのはよくある話です。その三つを拾うために、一時間分の発言を全部書き起こす必要はありません。走り書きのメモをそのまま渡して、決定と宿題だけ抜いてもらう。人がやると三十分かかる仕分けが、頼み方ひとつで数分の待ち時間に変わります。残った時間は、議事録を清書することではなく、拾った宿題に取りかかることに使えます。

試してみるなら

まず、無料のAI(ChatGPTやGeminiやClaude、どれでも)を一つ開きます。会議のメモを丸ごと貼り付けて、次のようにそのまま頼んでみます。

「これは会議のメモです。次の三つに整理してください。(1)決まったこと (2)次回に持ち越すこと (3)宿題は『担当・期限・内容』の表で。メモに無いことは足さないでください」と入力してみてください。

最後の一文が効きます。AIは、間を埋めようとして、言っていないことを書き足すことがあるからです。「無いことは足すな」と釘を刺しておくと、その足しすぎが止まります。

出てきた形が気に入ったら、二回目からは注文を足せます。「宿題の表は、期限が近い順に並べて」「先月の議事録の宿題で、今日ふれなかったものを最後に一行で挙げて」。こう頼むと、やり残しの追いかけまで一枚の中に入ってきます。

録音から始めたいときは、先に文字起こしが要ります。スマホの音声メモや、パソコンの文字起こし機能で文章にしてから、同じように貼ります。一度この頼み方を「型」としてメモ帳に保存しておけば、来週からはコピーして貼るだけです。

つまずきの先回り

一つ目。AIは、貼った文章の外は知りません。メモに書き忘れた決定は、当然、議事録にも出てきません。会議中のメモを完璧にする必要はありませんが、決まった瞬間だけは一言でも残す癖をつけると、後がずっと楽になります。

二つ目。無料のAIに社外秘のメモを貼ることには、線引きが要ります。取引先の名前、金額、個人情報。このあたりを含む会議は、貼る前に一度立ち止まってください。会社のパソコンでAIをどう使うかの決まりを先に置いておくと、毎回迷わずに済みます。

三つ目。出てきた議事録は、そのまま配らないこと。AIは、もっともらしい期限や担当を、勝手に埋めることがあります。配る前に、宿題の欄だけは自分の目で確かめる。ここだけは人の仕事として残しておくのが安全です。

明日できるのは、議事録の仕組みを会社ぜんぶで変えることではありません。次の会議のメモを一回だけ、この三つの箱に振り分けてもらう。それだけです。うまくいけば、夕方の「何が決まったんだっけ」が、一枚の紙に変わります。