机の端に、セミナーの案内が溜まっていないでしょうか。商工会議所から届いた封筒。取引先がついでに置いていったチラシ。メールの件名にも「AI活用」が並びます。書いてあることは、たぶん間違っていません。ただ、平日の午後に二時間を空ける算段がつきません。
7月21日、OpenAIが中小企業向けの取り組みを始めると発表しました。名前はChatGPT for small business programです。中身は四つで、オンラインの講習、対面で開く講座、使い方のガイド、そして中小企業向けの道具と提携先。参加はウェブの登録フォームから受け付けています(OpenAIの発表)。
先に残念なほうを書きます。対面の講座はアメリカ各地で開かれるもので、つくばから飛行機に乗る話ではありません。ではまるごと他人事かというと、そうでもないと考えられます。
献立表だけが先に届いた
オンラインの講習で扱うと案内されているのは、経理、集客、ネット販売。実演つきで見せる例として、この三つが先に名前を挙げられています。AIを作っている当人が、中小企業に教えるならまずここからだと決めた順番だと考えられます。
料理はまだ食べられないけれど、献立表だけが先に届いた、という状態に近いです。店には入れません。それでも、何を出す店なのかは読めます。そして経理、集客、ネット販売という三語は、つくばの会社でもそのまま自分の仕事の名前に置き換わります。
置き換えてみると、たいてい具体的になります。経理は請求書の作成と入金の照合かもしれません。集客はネットの口コミへの返信かもしれません。並んでいるのは、どれも社長か事務の方が片手間でやっている仕事です。
道具のほうは、すでに手元にある
講座に出られなくても、教材になっている道具は同じものが使えます。中心にあるのはChatGPT Workで、これは以前に一度扱いました。「ChatGPT Work登場。資料づくりを任せられるエージェントとは」。会社の資料や業務のアプリにつないで、いくつもの手順をまとめて任せられる仕組みです。会社の規模を問わず、どの契約でも使えるものとして案内されています。
つまり今回増えたのは、道具ではなく教え方のほうです。同じ日に、ChatGPT WorkとCodexを合わせた利用者が一千万人に届いたという数字も出ています。使う人がひととおり増えて、次は使い方を配る番になった。そういう順番に見えます。
この順番は、小さい会社にとってはありがたい向きだと考えられます。社員が十人前後の会社に足りていないのは、たいてい道具ではありません。教わる時間と、隣で「その使い方で合っています」と言ってくれる人のほうです。研修の担当がいる会社なら社内で回せますが、そういう役の人はふつう置けません。四つの中身のうち、ガイドは読み物です。公開されれば、会場がどこであれ読む側の場所は問いません。
試してみるなら
支払いのいらない範囲から始められます。ChatGPTを開いて、さきほどの三語を自分の会社の言葉に直す作業を、AIと一緒にやってみてください。
「うちはつくばで社員九名の内装工事の会社です。経理、集客、ネット販売という三つの区分を、うちの実際の作業名に置き換えてください。そのうえで、それぞれについて今週中に三十分で試せることを一つずつ、手順つきで書いてください」と入力してみてください。
手元に請求書や案内文の実物があるなら、写真を撮って一緒に貼ると話が早いです。入力欄の左にある「+」から写真を選べます。そのうえで「この紙を作る手間のうち、AIに渡せるのはどこからどこまでですか」と続けて聞いてみてください。全部を渡す話ではなく、境目を決める話になります。
つまずきの先回り
一つ目。登録フォームがあるからといって、つくばで受講できるという意味ではありません。対面の講座はアメリカ国内です。登録した場合、案内は英語で届くと考えておいたほうが落ち着きます。
二つ目。ChatGPT Workは会社の資料につなぐ仕組みです。つないだ範囲が、そのままAIの見える範囲になります。共有フォルダを深く考えずに丸ごとつなぐと、給与の一覧や取引先の個人情報まで対象に入ります。つなぐ前に、どのフォルダまでかを紙に書いてから作業してください。
三つ目。中小企業向けと名前が付いていますが、これは値段が変わったという発表ではありません。講習と支援の話です。社内に「中小企業は安くなるらしい」と伝えてしまうと、後で請求書を見たときに食い違います。
今日できるのは、これくらいです。経理、集客、ネット販売。この三語を紙に書いて、自分の会社での呼び名に直してみてください。三行で終わります。書き換えたその紙が、講座に出なくても手に入る科目表です。
出典(一次情報):Introducing the ChatGPT for small business program(OpenAI公式)