受け取った問い合わせを、見積りの相談か、苦情か、ただの売り込みか。朝いちばんにこの仕分けをしてから本題に入る。そういう会社は、つくばにも少なくないはずです。一件ずつは一分の作業でも、数が積もると午前が溶けます。
AnthropicがClaudeの小型モデルの新版、Claude Haiku 5.5を公開しました。要約や分類、問い合わせの振り分けのような「一つひとつは軽いが、とにかく数が多い」仕事に向けた、同社でいちばん安くて速い小型モデルです。前の版のHaiku 4.5とくらべ、動かす費用は平均でおよそ75%下がったと説明しています(発表はこちら)。
大きくて賢いモデルが一台あれば十分、という話ではありません。Anthropicは、込み入った調べ物や設計は上位のOpus 5.5やSonnet 5.5に任せ、その下働きとして数をさばく役にHaiku 5.5を置く、という組み合わせを想定しています。今回から、小型モデルとしては初めて「費用を抑えるか、賢さを取るか」をつまみで選べるようにもなりました。
で、あなたの会社はどうすればいい
ここで効いてくるのは、値段の桁です。これまで「AIに全部読ませて仕分けさせたら便利だが、件数が多すぎて費用が気になる」と見送っていた仕事があるとします。その費用の目安が、下の階のモデルでおよそ四分の一になった、というのが今回の中身です。一回あたりが安いので、「たくさん回す」前提の作業ほど割に合いやすくなった、と考えられます。
具体的には、たまった問い合わせの一次仕分け、長いやり取りの要点抜き出し、商品説明の体裁そろえ。どれも賢さより「速くて安くて、数をこなせる」ことが効く仕事です。RASHINの見立てでは、今の中小企業にとっての変化は「新しい道具が増えた」ことより、「前は高くて諦めた使い方の値札が下がった」ことのほうにあります。
ただし、これはAnthropicが開発者向けに出したAPI(他の道具から呼び出して使う仕組み)という作りの道具で、AWSやGoogle Cloud、Azureといった基盤の上で動かす前提です。多くの読者がふだん触るのは、スマホやパソコンのClaudeのアプリやChatGPTのほうでしょう。そちらの画面に今日から新しいボタンが増えるわけではありません。関係するのは、こうした道具を社内で組んでもらっている会社や、これから「数をさばく仕組み」を外注・内製で考える会社です。
試してみるなら
- まず「数が多くて手が回らない仕分け仕事」を一つ、紙に書き出してみてください。問い合わせの振り分け、申込書の項目チェック、レビューの要約など、判断が軽くて件数が多いものが候補です。
- 開発者やベンダーに相談するときは、こう頼むと話が早いです。「この仕分けを、Claude Haiku 5.5のような安い小型モデルで回したら、一件いくらで、月いくらになりそうか見積もってほしい」。いきなり仕組みを作らず、まず費用の見当をつけるのが先です。
- 自分で確かめたいだけなら、Claudeのアプリや無料枠で、同じ仕分けを十件ぶん頼んでみて、手でやるのと差が出るかを見ます。使い物になりそうなら、その先の自動化を相談すればよいです。
つまずきの先回り
- これはAPI向けのモデルで、Claudeのアプリでモデル名として選べるものとは限りません。「アプリでHaiku 5.5を探したのに見当たらない」と悩まないよう、先に性格の違いを押さえておきます。
- 「いちばん速い」はAnthropicの説明ですが、脚注で条件が付いています。あくまで通常の速さでの比較で、上位モデルの高速モードより速いという意味ではありません。速さを売りに社内へ通すときは、ここを言いすぎないほうが安全です。
- 安いのは、おもに一回の入力が10万トークン(トークンはAIが文を数える単位)までの場合です。長い資料を丸ごと何度も読ませる使い方だと、下がり幅は小さくなります。費用の見積りは「どれくらいの長さを、何回」で変わると考えておいてください。
- 今回あわせて、上位のSonnet 5.5のキャッシュ読み出しの費用も半額になり、MaxとTeamの契約者には毎月のAPI利用ぶんの枠が配られます。自社の契約でどれが対象かは、使っているプランによります。
明日できる小ささは、仕組みづくりではありません。「数が多くて諦めていた仕分け」を一行、メモに書き足すこと。値札が下がった今、もう一度その一行が割に合うかを、誰かに見積もってもらうところから始められます。
出典(一次情報):Anthropic