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社内に、動くけれど遅いプログラムが一つや二つ、眠っていないでしょうか。夜に回して朝に結果を見る集計。装置から吐き出されるログを並べ替えるスクリプト。書いた本人はもう辞めていて、誰も中身に触れない。速くしたいけれど、それができる人は外にいて、頼めば高い。だから遅いまま使い続けている。つくばには、そういう「重い計算」を抱えた会社が少なくありません。

9月17日、AnthropicがClaudeで科学者向けのプログラムを速くした結果を公開しました。生物の分子を予測・設計するために科学者が使う、公開されたモデルを30を超えて、4週間足らずで作り直したという話です。速さは平均でおよそ4倍、精度の低下はごくわずか。出力を変えないままでもほぼ2倍になりました。監督したのは、生物の分子には詳しいものの、速度改善やカーネル(GPUを速く動かすための低い層のプログラム)の開発は経験のない2人の担当者。書き直しの中身はClaudeが担いました。作り直したプログラムは今日から公開されています(詳しくは一次情報へ)。

数字でわかりやすいのは費用のほうです。以前は分子の設計を一つの標的あたり最大10,000ドルまで使って回していました。今回は一つのGPUと24時間で、GPUとトークン合わせておよそ150ドルの費用で、以前と同じくらいの(コンピュータ上での)成績に届いたと書いています。桁が二つ落ちた、という言い方をしています。

この発表は、つくばの会社に何を意味するか

道具そのものは生物の研究用で、あなたの会社が今日ダウンロードして使うものではありません。競技会も研究者向けで、日本で誰でも申し込める製品として出たわけでもない。だから、これは「明日から使える機能」の話ではなく、「値段の地図が書き換わりつつある」という備えの話として読むのが正しいと考えられます。

その地図の中身はこうです。これまで「速くするには専門家に外注するしかなかった計算」が、専門家でない人の監督のもとでAIに任せて速くなった。ここが一段だけ効いてきます。社内に重くて遅いコードや、回すたびに費用がかさむ処理を抱えている会社ほど、「速くする・安くする」の見積もりが、少し前より下がっている可能性がある、ということです。断定はできません。今回速くなったのは科学の専門モデルで、あなたのExcelのマクロが4倍になる保証はどこにもない。ただ、外注前提で諦めていた小さな改善を、もう一度机に載せてみる理由にはなります。

試してみるなら

まず、社内で一番「遅い・重い」と言われている処理を一つ選びます。夜間バッチでも、開くのに時間のかかる集計ファイルでも構いません。そのコードや手順を手元のAI(ChatGPTやClaude、Geminiなど)に見せて、こう頼んでみてください。「この処理のどこに時間がかかっているか、心当たりを3つ挙げてください。そのうえで、結果を変えずに速くできそうな箇所を、初心者にもわかる言葉で説明してください」。いきなり書き直させず、まず「どこが遅いか」を言葉にさせるのが安全です。無料の範囲で試せます。

次に、費用がかかっている処理があれば、「同じ結果を、もっと少ない計算で出す方法はありますか。精度を少し落としてよい場合と、落とさない場合で分けて教えてください」と聞きます。今回の発表でも、速さは「精度を少し落として4倍」と「出力を変えずにほぼ2倍」の二段で示されていました。自社でも、その二択を最初に分けて考えると判断しやすくなります。

つまずきの先回り

一つ目。これは製品ではなく研究の報告です。公開されたのは生物モデル用のコードで、そのまま自社の業務に差し込めるものではありません。使えるのは「AIにコードを速くさせる」という考え方のほうで、道具そのものではない、と分けて持っておくと期待外れになりません。

二つ目。監督役は速度改善の素人でしたが、生物の分子には詳しい人でした。つまり「その処理が何をしていて、結果が正しいか」を判断できる人は要る、ということです。中身のわかる人が社内にいない処理をAIに書き直させると、速くはなっても、答えが合っているか誰も確かめられません。速さより先に、正しさを確かめられる人を横に置くのが順番です。

三つ目。「およそ4倍」「ほぼ2倍」はすべて限定のついた数字です。平均であり、モデルによって差があります。自社で試すときも、一度だけ速くなったのを見て全体に広げず、何度か回して同じだけ速いか、結果がずれていないかを確かめてから広げてください。

眠っているスクリプトを一つ、今日の帰り際に思い出してみる。速くする決断は今しなくていい。「これ、AIに一度どこが遅いか聞いてみるか」と付箋を貼るところまでで、明日は十分です。

出典(一次情報):How Claude is uplifting biomolecular modeling(Anthropic公式)