朝いちばんに頼む仕事は、たいてい地味です。昨日の打ち合わせの録音を要約する。見積書の文面を整える。表計算の関数がなぜか合わないので直してもらう。派手さはないけれど、こういう小さな用事こそ数が多い。そして数が多いぶん、一件あたりの待ち時間と費用が、月末にはそれなりの山になります。
その地味な仕事を受け持つ一台が、9月28日に新しくなりました。Anthropicが Claude Sonnet 5.5 を公開したのです(発表)。Claudeには段のちがう複数のモデルがあり、いちばん上の Opus 5.5 は込み入った判断のいる仕事向け。今回の Sonnet 5.5 は、その下で日々の用事をさばく働き者にあたります。Anthropicの説明では、前の Sonnet 5 より3割以上速く、たいていの仕事で費用は最大3割ほど下がる、とされています。
で、あなたの会社はどうすればいい?
まず押さえておきたいのは、多くの会社が普段さわっているのは、この Sonnet のような普段使いの段だということです。最上位のモデルは賢い代わりに一件あたりが高い。文面の下書きや要約や関数直しといった、量は多いが一件は軽い仕事には、働き者の段のほうが釣り合います。だから「働き者が速く安くなった」という今回の更新は、派手な新機能の発表より、じつは日々の懐に効きやすい。
費用の下がり方には理屈があります。Anthropicによると、Sonnet 5.5 の値段そのものは前の Sonnet 5 と同じ($2/百万入力トークン、$10/百万出力トークン)。ただ同じ用事を片づけるのに使う分量が減るので、一件あたりで見ると安くなる、という説明です。つまり単価が下がったのではなく、同じ仕事を少ない手数で終える。ここは「あなたの費用がそのまま3割減る」と約束する話ではなく、Anthropicの試験でそうなった、という数字として受け取るのが正確です。
一段だけ実務につなげておきます。下ごしらえが速く返ってくれば、空いた時間を人の確認に回せると考えられます。AIに一次案を作らせ、人が最後に目を通す。この二段構えの、前半が軽くなる。派手な変化ではありませんが、毎日くり返す仕事ほど、この差はあとから効いてくるはずです。
試してみるなら
もし普段からClaudeのアプリで仕事を頼んでいるなら、新しい Sonnet 5.5 はすでに使える段に入っています。特別な設定は要りません。まずはいつもの用事で、返ってくる速さを前と見くらべてみてください。
頼み方は、そのまま貼れる形で持っておくと楽です。議事録なら「この録音の文字起こしを、決まったこと・宿題・次の打ち合わせ日の三つに分けて箇条書きにしてください」。見積の文面なら「この条件で、取引先に送る見積の添え状を、丁寧すぎず簡潔に3案ください」。表計算なら「この関数がエラーになる原因を一つずつ挙げ、直した式を示してください」と入力してみてください。
Claudeのアプリでは、標準の「effort(手のかけ具合)」は中(Medium)に設定されています。軽い用事なら低めにすると、より速く安く返ります。まずは中のまま試し、物足りなければ上げる、で十分です。
つまずきの先回り
一つめ。「速く安く」は普段使いの仕事の話です。腰を据えた判断や、長く込み入った検討では、上位の Opus 5.5 のほうが強いとAnthropic自身も書いています。何でも Sonnet に振ればよい、ではありません。仕事の重さで段を選ぶ。
二つめ。同じ Claude でも、いちばん軽くて量をさばく段の Claude Haiku 5.5 は、まだ出ていません。数週間のうちに加わる予定とされています。最安の段の登場を待つより、目の前の用事は 5.5 で回し始めるほうが早いです。
三つめ。開発者向けの注意が一つあります。これまで Sonnet を「考える機能をオフ」で使っていた場合、5.5 に移る前に新しい between_tools の設定へ切り替えが要ります。自社でAPIを組んでいる担当がいれば、移行の前に一声かけておくと、切り替え当日にあわてずにすみます。
明日できる小ささとして、まずは一件だけ。いつも頼む地味な用事を、新しい Sonnet 5.5 で一度やらせてみる。速さと出来を前と見くらべる。それだけで、働き者の段を入れ替えるかどうかの判断材料は、あなたの手元にそろいます。