「これ、専用の画面がひとつあれば楽なのにな」。そう思ったまま、何年もExcelと付箋でしのいでいる作業が、どの会社にもひとつはあります。新人の受け入れチェック、現場からの申請、在庫の受け渡し。作りたいのは大したものではない。でも、業者に頼むほどではないし、頼めば見積もりと打ち合わせで数週間が飛ぶ。だから、みんな見て見ぬふりをしてきました。
その「頼むほどではない小さな道具」の作り方が、少し変わりそうです。Microsoftは2026年9月10日、話しかけるだけで業務アプリを組めるしくみを、Copilot CoworkとCopilot Studioで公開しはじめたと発表しました。Copilot Coworkでは、チャットに `/app` と打つ新しい機能が、同社のFrontierプログラムを通じてすでに使えます。Copilot Studioのほうは、来週にかけて試験公開(public preview)が広がっていく予定だと書かれています。
で、あなたの会社はどうすればいい?
使い方は、作りたい結果を言葉で伝えるところから始まります。「誰が使い、どんなデータを扱い、何をさせたいか」を説明すると、AIが動くアプリの下書きを起こす。あとは会話で直しながら、画面で確かめ、中の仕組みも見られる。発表では、受け入れ用のアプリが進み具合を表示して記録を更新する例や、現場作業のアプリが手順を出して結果を書き戻す例が挙がっています。ここで大事なのは、ただ情報を映すのではなく、既存のデータにつないで書き戻すところまで含んでいる、という点です。
つまり、これまで「表計算では回しきれないが、専用ソフトを買うほどでもない」と宙に浮いていた業務が、社内の言葉のまま形になる余地が出てきた、ということです。RASHINの見立てでは、いきなり基幹業務を置き換える話ではありません。まず効くのは、担当者ひとりの頭の中にある手順を、他の人も使える一枚の画面にする、という小さな置き換えのほうだと考えられます。付箋と口伝えでつないでいた仕事に、共通の入り口ができる。効くとすれば、そこからです。
ただ、今日から誰でも、とはいきません。Copilot Coworkの `/app` はFrontierプログラム経由で、Copilot Studio側は試験公開が広がる途中です。手が届く環境なら早めに触っておく価値はありますが、まだ「見てから決める」段階の会社が多いはずです。
試してみるなら
- 環境が整っているなら、Copilot Coworkのチャットで `/app` と打つところから始められます。Copilot Studio側は来週にかけて展開が広がる途中なので、自社の環境に来ていれば、ホーム画面で「App(Preview)」を選んで同じように始められます。最初のひとことは、たとえばこう。「来客の受付記録をつけるアプリを作りたい。入力するのは会社名・担当者名・訪問日時・対応した社員で、一覧で見返せるようにして」と伝えてみてください。
- まだ環境が無い会社は、作るより先に「棚卸し」を。いま付箋やExcelでしのいでいる作業を3つ書き出し、それぞれ「誰が・何を入力し・何を見たいか」を一行で言葉にしておく。この一行が、そのままアプリへの頼み方になります。
- 公開されたアプリは、Microsoft 365の管理センターに一覧で並びます。誰が何を作ったかを管理側が見られる仕組みなので、試すときも「勝手に増やさない」で、まず管理担当と一声かけてから。
つまずきの先回り
- 費用は使った分だけ。 発表では、アプリの作成と実行は従量課金(usage-based billing)だと明記されています。作って終わりではなく、使うほど費用がかかる型です。試しに作るのは軽くても、全社で回す前に、どのくらい使うと月いくらになるのかを一度見積もっておくと安心です。
- データにつなぐと、権限がそのまま効く。 業務データへの接続はコネクタを通して行われ、Microsoft Entraのログイン情報や、組織のデータ・コネクタの決まりが初期状態で尊重される、とあります。裏を返せば、元の権限設定が雑だと、アプリ経由でも同じ穴が出るということ。つなぐ前に、その台帳を誰が見てよいのかを確かめておく段取りが要ります。
- 今は試験公開。 Copilot Studio側は来週にかけて広がる予定で、今日この瞬間にすべての環境で使えるわけではありません。「うちでも動くはず」と社内に触れ回る前に、自社の環境で実際に出てくるかを確かめてから話を進めるのが安全です。
明日できる小ささで言えば、アプリを作ることではありません。「専用の画面がひとつあれば楽なのに」と思っている作業を、ひとつだけ紙に書き出すこと。道具が誰にでも使える日は近づいています。先に決めておくべきは、何を頼むか、のほうです。
出典(一次情報):Build apps in Copilot Cowork and Copilot Studio(Microsoft公式ブログ)