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電話が鳴る。手近な紙の切れ端に走り書きする。社名、用件、いつまで。書けた。安心して受話器を置く。

夕方、その紙が見当たりません。資料の下から出てきても、今度は自分の字が読めない。誰の、何の用だったか。

ただ、本当に困るのはそこではありません。翌日、相手から電話がかかってきます。あの件どうなりましたか、と。折り返しが漏れていた。痛いのは字が読めなかったことではなく、こちらが動かなかったことです。

読める形にしても、漏れるものは漏れる

丁寧に書けば読めます。写真に撮ってAIに文字を起こさせれば、もっと読めます。それでも漏れます。

メモは、自分が見に行かないと何も起きないからです。机の上で待っているだけで、向こうから声をかけてはくれません。見に行くのを忘れた時点で、字が読めるかどうかは関係なくなります。

直すべきは残し方ではありません。思い出す仕組みが無いことです。

管理される場所に入れる

紙をやめます。変えるのは、入れる先です。

電話を切ったら、スマホに向かってこう言います。

「OK Google、明日の朝9時に〇〇商事の田中さんに折り返し、とタスクに追加して」

これでGoogle ToDo リストに入ります。あとは、明日の朝9時に通知が出ます。こちらが見に行く必要はありません。向こうから出てきます。

済ませたらチェックを付ける。やったかどうかが記録に残ります。同じリストを共有すれば、外回りの担当にも見える。紙の切れ端では、どれも成り立ちません。

書くより速い、という話ではありません。書いたものが机で止まるか、時間になって動き出すか。その差です。

AIの出番は、その先にある

ここまでは、スマホの標準機能だけで足ります。AIを持ち出す場面ではありません。

AIが効くのは、たまった後です。一日ぶんのタスクを貼って、急ぎの順に並べ替えてもらう。今日中、なるはや、といった曖昧な言い方を、何時までなのかに直してもらう。誰に何を返すのかを、そのまま社内のチャットに流せる形に整えてもらう。

登録は機械の仕事、整理はAIの仕事、判断は人の仕事。この順で切ると、どこに手をかけるべきかが見えてきます。

喋って済ませる話は「日報は、帰り道に喋って終わりにする」でも書きました。手を使わない、という点では同じ入口です。

試してみるなら

はじめの一回だけ、GoogleアカウントとToDoリストの接続が要ります。画面の案内どおりに進めば終わります。二回目からは、喋るだけです。

明日、電話を一件受けたら、切った直後にこう言ってみてください。

「OK Google、今日の15時に〇〇さんに折り返し、とタスクに追加して」

ToDoリストのアプリを開いて、日時付きで入っているかを見ます。入っていれば、それで完成です。ここまでが標準機能の範囲で、費用はかかりません。

一日ためたら、リストの中身をChatGPTやGeminiに貼って、こう入力してみてください。

「この折り返しリストを、急ぎの順に並べ替えてください。期限が曖昧なものは、何時までかを補ってください。」

出てきた並びを見て、違うところだけ自分で直します。この一手間で、朝いちばんに見る順番が決まります。

つまずきの先回り

一つ目。電話中には言えません。相手の声が入りますし、こちらの手も足りない。切ってから、が条件です。逆に言えば、受話器を置いた三秒のうちにやってしまえば、そのうち手が勝手に動くようになります。

二つ目。ここがいちばん大事です。タスクには取引先の社名や担当者の名前が入ります。個人向けの無料プランでは、入力した内容が学習に回る設定のこともあります。会社で使うなら、業務用のプランを選ぶか、学習に使わない設定にしてから始めてください。リストを共有する場合は、誰まで見えるのかも先に決めておく。この線引きは電話メモに限らずAIを仕事で使う入口の話なので、一度社内で三行だけ決めておくと後がらくになります。

三つ目。ここに書いたのは、Androidで実際に通した手順です。iPhoneでもSiriから同じようなことができますが、当社では確かめていません。手元がiPhoneの方は、同じ言い方で試してみて、入らないようなら言い方を変えてください。確かめていないことを、確かめたようには書けません。

明日、一件だけ

全部を仕組みにしなくて構いません。明日いちばん忘れたくない一件、それだけを声でToDoに入れてみてください。

紙に書かなかった一件が、時間になって向こうから出てくる。それを一度見てしまえば、切れ端に戻る理由がなくなります。