見積りのたたき台を、AIに書かせる。出てきた文章は、悪くない。でも、それをお客さんに見せる形にするのは、これからです。文章をスライドに貼り直し、数字を表に打ち込み、体裁を整える。頼んだのは下書きだったはずなのに、仕上げは結局こちらの手仕事。そうやって、昼前の三十分が溶けていく。心当たりのある方は、少なくないと思います。
10月29日、GoogleがGeminiアプリに新しい使い方を加えたと発表しました(Google Workspace Updates)。チャットの中で、スライドや表、文書をそのまま作って、画面の上で手直しできるようになります。全画面に広げて直接打ち込む。気になる一行を選んでGeminiに尋ねる。文の調子を整えてもらう。できたスライドはGoogle Slidesで開くか、PPTXやPDFで書き出す。表はGoogle Sheetsで開く。文書やPDFはその場で直して、Driveに上げられます。これらはいま、Geminiアプリが使えるすべての言語で、アプリを使える人なら年齢を問わず使えます。日本語も、その中に入っています。
ここで変わったのは、作業の数ではなく、作業と作業のあいだです。これまでは、AIに下書きを頼み、それを別のアプリに移してから形にする、という二段構えでした。新機能は、その「移し替え」の一手間を減らします。発表には、PDFの下読みと手直しはウェブと携帯の両方、それ以外の形式(文書・表・スライド・Markdown・TXT・コード)はウェブだけ、と書かれています。手のひらの上で全部が完結するわけではない。けれど、机に向かえる時間なら、会話から一枚のファイルまでが地続きになります。
で、あなたの会社は何をそろえておくか
資料づくりの専任がいる中小企業は、そう多くありません。考えは頭にある。でも、それをスライドや表の形にする時間がない。だから提案が後回しになる。この順番を、ずっと当たり前として飲み込んできた会社は多いはずです。
今回の機能が崩すのは、まさにその順番だと考えられます。体裁を整える工程を道具が肩代わりするなら、人の側に残るのは「何を載せるか」です。言い換えると、先にそろえておくと効いてくるのは、きれいな見た目ではなく、中身の素材のほうです。去年の実績の数字、商品の特徴を三つ、お客さんがいちばん気にする点。この素材が手元にあるかどうかで、出てくるファイルの質は変わってきます。道具が速くなったぶん、素材の薄さがそのまま表に出る、とも言えます。
RASHINの見立てでは、この機能のいちばんの使いどころは、完成品づくりではなく「たたき台づくり」です。いきなり清書を狙わない。会話で骨格を出させて、ざっと形にして、そこから人が削る。この往復の速さが、提案の数そのものを増やしてくれます。
試してみるなら
まずは、ふだんパソコンのブラウザでGeminiアプリを開き、作りたいものを言葉で頼むところから始めます。管理者側の設定は要りません。
- 「来月の新商品を紹介するスライドを5枚、見出しと要点だけで作ってください。1枚目は表紙、最後は問い合わせ先です」と入力してみてください。チャットの中に下書きが出たら、Google Slidesで開くか、PPTXで書き出します。
- 表なら「取引先ごとの今月の納品予定を、取引先名・品目・納品日・担当の4列の表にしてください」と頼み、Google Sheetsで開いて続きを編集します。
- 文章を直したいときは、画面を全画面に広げて、気になる一文を選んでから「ここをもっと短く」と指示します。清書を一度で狙わず、短い指示を重ねるほうが、思った形に近づきます。
つまずきの先回り
- PDF以外のファイル(文書・表・スライドなど)の作成と編集は、発表時点ではウェブだけの対応です。携帯のGeminiアプリで同じことをしようとして見当たらない、という行き違いが起きやすいので、この作業はパソコンで行うものと割り切ってください。
- できあがったスライドや表は、Geminiの画面で見えている下書きです。Google SlidesやGoogle Sheetsで開くまでは、まだ保存先の定まっていない仮の状態と考えておくほうが安全です。大事な資料は、早めに開いて保存しておきます。
- この機能に管理者の切り替えはありません。会社の方針でGeminiアプリ自体を止めている場合は、そこから見直す必要があります。情報システムの担当がいる会社は、どの範囲で使うかを先に一言そろえておくと、あとが楽です。
明日、いきなり完璧な提案書を作ろうとしなくて構いません。手元にある数字を一つだけ渡して、表を一枚出させてみる。それだけで、この道具が自社の何に効くのかが、机の上で見えてきます。
出典(一次情報):Create, preview, and edit files directly in the Gemini app(Google Workspace Updates公式)