4コマ1 4コマ2 4コマ3 4コマ4

朝、電話が鳴る。同じ問い合わせが、今日も三件目。「営業は何時からですか」「駐車場はありますか」。答えは決まっているのに、そのたびに手を止める。受付を一人置く余裕はない。かといって、留守番電話では相手が離れていく。この、いちばん最初の一言を誰が受けるか、という問題を、多くの会社が抱えたままにしている。

Googleが9月24日、その最初の一言に関わる機能を出した。Gemini 3.8 Live with Live Avatar。画面の中の人物像が、こちらの声を聞き、映像を見て、表情を作りながら話し返す。口の動きは声に合い、話の順番も相手と交代する。Googleはこれを、接客や操作の案内に使う想定だと書いている。今のところ提供先はGemini Enterpriseで、大きな会社向けの区分から始まっている。

だから、今日から自社の受付に置ける道具ではない。ただ、ここで立ち止まって考えておく値打ちはあると、RASHINは見ています。この機能が示しているのは、話しながら裏で調べる、が一つの流れでできるようになった点だからです。発表では、会話を止めずに背景で必要なデータを取りに行く例として、ホテルのチェックインが挙げられています。相手と話している最中に、予約の確認を裏で済ませる。人間の受付が、話しながら台帳をめくるのと同じことを、機械が滞りなくやる段に入ったと考えられます。

では、あなたの会社の仕事を見渡したとき、これはどこに効きそうか。目印になるのは、聞きながら何かを調べて答える、という形の応対です。在庫はありますか、この型番は使えますか、納期はいつですか。相手の言葉を受けて、台帳や表を一度めくってから返す。この往復こそ、今回の機能が得意にしようとしているところだと考えられます。裏返せば、一問一答で完結しない込み入った相談は、まだ人が受ける仕事として残る。任せる線と、残す線を分けて眺めておくと、道具が届いたときに迷いません。

試してみるなら

映像のアバターはまだ手が届かなくても、最初の一言の台本は今日書けます。そして台本さえあれば、いま使える文字の会話AIでも半分は回せます。順番はこうです。

まず、この一週間にかかってきた電話やメールを思い出し、同じ問いを三つ挙げる。営業時間、場所と駐車場、見積もりの頼み方、あたりが多いはずです。次に、その三つへの答えを、話し言葉で一文ずつ書く。ここまでが台本です。

書けたら、手元のAIにこう頼んでみてください。「次の三つのよくある質問と答えを、初めての相手にも失礼のない受付の口調にそろえてください。堅すぎず、それぞれ二文以内で。」そのまま貼れる返答が並びます。これを問い合わせフォームの自動返信や、電話の一次応答の原稿に流用する。アバターが来る前に、答える中身の側を先に整えておく、という順序です。

もう一歩進めるなら、想定外の問いへの逃げ道も作っておきます。「この質問には答えを持っていません、と伝えたうえで、担当者につなぐ一文を添えてください。」と続けて頼む。決まった答えと、答えられないときの一言。その二つがそろえば、受付の台本としては十分に動きます。

つまずきの先回り

一つ。今回のLive Avatarは、Gemini Enterpriseでの提供から始まっています。個人向けや無料の区分ですぐ使えるものではありません。自社のブランドに合わせた独自のアバターを作る機能は、さらに限られていて、今は申請して許可された利用者だけが対象だと書かれています。明日から受付に立たせる話ではなく、そのうち来る話として構えるのが実際的です。

二つ。97の言語に対応し、会話の途中で切り替わる、と発表にはあります。ただし、どの言語がどこまで自然かは、発表文だけでは分かりません。日本語で使う前提なら、導入のときに自分の業種の言い回しで試し、崩れないかを見てから任せる範囲を決めるのが安全です。

三つ。この機能が作る音声と映像には、SynthIDという見えない透かしが入る、とGoogleは説明しています。AIが作ったものだと後から見分けられるようにする仕組みです。裏を返せば、アバターの応対は機械が話している前提のもの。込み入った相談や、責任の重い返答まで肩代わりさせない線引きを、最初に決めておくとよいでしょう。

締めに、明日できる小ささを一つ。受付の台本、その一枚を書くだけでいい。同じ問い合わせの三つと、その答えの三文。アバターが来る日まで、それは人が読んでも、文字のAIが読んでも使えます。道具が届いてから慌てるより、答える中身を先に持っておく。始まりは、いつもそのくらいの大きさです。

出典(一次情報):Introducing Gemini 3.8 Live with Live Avatar(Google公式ブログ)