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電話が鳴る。受付の人が出る。相手が住所を言いかけて、途中で「あ、やっぱり送り先は別で」と言い直す。こちらは相づちを打ちながら、メモを取りながら、次の言葉を待つ。この「聞きながら話す」を、人はあたりまえにやっています。ところが機械にやらせると、ここが一番むずかしいところでした。

9月10日、OpenAIが GPT-Live-1 を API で公開しました。聞くことと話すことを一つのモデルで同時にこなす音声AIです。相手が話している最中に割り込まれても、会話が途切れにくい。これまでの仕組みは、声を文字にする・考える・また声に戻す、と三つの部品をつなぐ形でした。つなぎ目ごとに間が生まれ、相手が言い直すと調子が狂う。GPT-Live-1 はそこを一つにまとめ、予約や問い合わせなど電話での応対にも使えると発表文は書いています。

発表文では、込み入った判断は裏の別のモデル(GPT-6 Astra など)に回せる、とも説明されています。声のやりとりは GPT-Live-1 が受け持ち、難しい考えごとは奥の頭脳に任せる、という分業です。割り込みへの強さについては、ある語学学習サービスの初期の評価で、以前の順番待ち型に比べて割り込みが約8割減ったと書かれています。数字はその一社の場合の話で、どこでもそうなるという約束ではありません。それでも、相手の言葉を待てる機械が出てきた、という手触りは伝わってきます。

で、あなたの会社はどうすればいいか。まず落ち着いてよいのは、これは今日すぐ棚から出して使える完成品ではない、という点です。API、つまり開発者が自社の仕組みに組み込むための部品として出ています。日本語を含む対応言語は今後さらに広げる予定、と発表文にあります。だから今の話は「導入」ではなく「備え」です。慌てて何かを買う日ではなく、来たるべき日に向けて、自分の会社の言葉を整えておく日です。

とはいえ、電話の受け答えを機械に任せられる日は、思ったより近いのかもしれません。予約、注文の変更、よくある問い合わせ。決まった型の会話ほど、こういう道具は効いてくると考えられます。備えるなら、道具が来てから慌てないように、自社の電話応対を言葉にして残しておくことです。台本があれば、人が新しく入ったときにも役に立ちます。

試してみるなら

  • 普段の電話で一番多い問い合わせを3つ、紙に書き出してみてください。「営業時間は」「予約したい」「注文を変えたい」。それぞれに、いま人が返している言葉をそのまま添える。これが将来、機械に教える台本の下書きになります。
  • ChatGPT にこう入力してみてください。「あなたは[業種]の電話応対係です。電話でよく聞かれる質問と、その標準的な受け答えを10組、会話文の形で書き出してください」。出てきたものを、自社の実際の言い回しに直す。ここは人の仕事です。無料の範囲で今日できます。
  • 「この質問は人に回す」という線引きも一緒に決めておく。込み入った苦情や例外は、機械がいったん受けて人へつなぐ。発表文でも、必要なときは人に引き継ぐ使い方が想定されています。線引きを先に決めておくほど、あとで任せる範囲を広げやすくなります。

つまずきの先回り

  • 料金として発表文にある1分あたり0.05ドルは、音声の層だけの値段です。裏で考える別のモデルの分は、その上に乗ります。この値段だけで全部まかなえる、と読み違えないこと。
  • 対応言語の拡大は「今後の予定」として書かれています。日本語で最初から思いどおりに動く、と当て込んで待つ話ではありません。
  • これは開発者向けの部品です。自社で使うには、組める人に頼むか、これを使ったサービスが出てくるのを待つことになります。今日の電話番がそのまま置き換わるわけではありません。
  • 会話を止めない作りが売りですが、裏を返せば、機械が話し続ける場面も起こりえます。人がいつでも代われる導線を先に決めておくと、あとで楽になります。
  • 電話は相手が見えません。名前や住所、注文番号を聞き取り違えると、後の手間が増えます。任せる範囲は、聞き違えても大ごとにならないところから始めるのが無難だと考えられます。

明日できる小ささは、新しい道具を入れることではありません。今日かかってきた電話を一本だけ思い出して、その受け答えを書き留めること。それだけで、備えは半分できています。

出典(一次情報):GPT‑Live‑1 in the API 発表(OpenAI公式)