「AI、入れてはみたんだけど、で、結局どうなの」。そう聞かれて、はっきり答えられる経営者は少ないと思います。月の請求は来る。使っている社員もいる。けれど、その分だけ仕事が軽くなったのか。数字で言えと言われると、詰まる。感覚では「たぶん楽になった」。でも「たぶん」では、来年も続けるかどうかを決められません。
9月16日、OpenAIが「AIの使い方をビジネスの価値につなげる」という記事を公開しました(出典)。中身は、ChatGPT WorkとCodexの管理画面(Admin Console)に、誰が何にどれだけ使ったかを見る分析機能を足した、という発表です。ただ、我々が持ち帰るべきは新しいボタンの話ではありません。同じ記事の後半に、道具がなくても使える「元が取れたかの測り方」が、五つの問いとして並んでいます。
まず、五つの問いを書き写す
その五つを、そのまま並べます。何を良くしたいか。今のやり方はどうなっているか。AIを入れると何が変わるか。それで何ができるようになるか。かけたお金に見合うか。ありふれた問いに見えて、多くの会社が飛ばす手順が一つ混ざっています。三つ目の「何が変わるか」を測るとき、OpenAIは「見直しと手直しにかかった時間も足して数える」と書いています。
AIが下書きを三十分で出しても、人が一時間かけて直したなら、浮いた時間はマイナスかもしれない。ここを数えずに「速くなった」と言うと、後で帳尻が合わなくなります。逆に、手直しがほとんど要らない仕事が見つかれば、それが「あなたの会社で本当に任せていい仕事」の線引きになります。測るのは、速さそのものより、直しの手間まで引いた後の差です。大きな会社なら管理画面が数えてくれる部分を、小さな会社では自分の手で数える。やることは同じで、道具が違うだけだと考えられます。
仮の試算は、結論でなく型を読む
記事には仮の試算も載っています。営業が資料を作る例で、二十人が週に二件、一件あたり三時間浮くとして年に5,520時間。その半分を有効な仕事に回し、人件費を一時間75ドルで見積もると約207,000ドルの価値。道具や研修や支えに年60,000ドルかかるとして、差し引き245%になる、という並びです。OpenAI自身が「すべて仮の数字」と断っているとおり、これは約束ではなく計算の型です。
RASHINの見立てでは、価値があるのは245%という結論ではなく、「浮いた時間 × 時給 −(道具代 + 教える手間)」という引き算の形そのものです。あなたの会社の実数を入れる枠だと思ってください。数字が他社と違っても構いません。同じ枠で、続けるか外すかを自分で決められること。それが、感覚で「たぶん」と答えていた去年との違いになります。明日できるのは、電卓を叩くことではありません。まず、いつもやっている面倒な仕事を一つ選び、今それに何分かかっているかをメモする。それだけ。比べる相手がなければ、AIが速いのか遅いのかも言えないからです。
試してみるなら
- 測りたい仕事を一つ決めて、AIにこう頼んでみてください。「この作業の手順を、かかる時間の目安つきで箇条書きにして。あとで前後を比べたいので、確認や手直しの工程も分けて書いて」と入力すると、比べるための「今の姿」が一枚にまとまります。
- 紙でもExcelでも、三つの列を作ります。「今のやり方の時間」「AIを使ったときの時間(手直しの時間も含む)」「道具代と教えた時間」。一週間だけ、同じ仕事で両方を記録します。専用の画面は要りません。手元の表で十分です。
- 判断は一週間後に一度だけ。差が出た仕事は続ける、出なかった仕事は頼み方を変えるか、いったんAIから外す。全部を一度に測ろうとせず、一つの仕事から始めてください。
つまずきの先回り
- 発表にあった分析画面(Admin Console)は、ChatGPT WorkとCodexという法人向けの契約に付くものです。個人向けのプランには付きません。多くの中小企業がまず使うのは画面ではなく、上の「紙一枚」のほうです。そこは取り違えないように。
- いちばん多い取りこぼしが、手直しの時間を数え忘れることです。出てきた答えをそのまま使える仕事はまれです。直しの時間を足してから比べないと、実際より良く見えてしまいます。
- 記事の245%や、他社の「8時間が1時間に」といった数字は、その会社の条件での報告や仮の試算です。あなたの会社で同じになるとはかぎりません。持ち帰るのは数字ではなく、測り方のほうです。
出典(一次情報):OpenAI公式