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会社のどこかに、中身がよく分からない仕組みが一つはあります。毎月の請求書を自動で作るExcelのマクロ。在庫を数える古いソフト。作ったのは何年も前に辞めた人で、手順書は残っていない。動いているうちは、誰も触らない。止まった日に、青くなる。

10月19日、OpenAIが、そういう古いコードをAIがどこまで読み解けるかを測った結果を公開しました(発表)。対象は、学ぶための教材が少ない「少数派の言語」。COBOL、Fortran、Visual Basicといった、金融や基幹のシステムを長く支えてきた言語です。同社によると、COBOLは世界のオンラインバンキングの40%超、ATM取引の95%を支えているとのこと。古いのに、止められない。だから厄介なわけです。

結果の数字は大きく動いています。既存のCOBOLプログラムをC++やJava、Pythonなど別の言語へ移す試験で、新しいモデルGPT-6.1 Solは低い推論設定で86.6%、設定を上げると97.9%まで正解したと報告されています。前の世代が5.4%だったことを思うと、桁が変わった。別に、20の言語でゼロからプログラムを書かせる試験もあり、そこでは、社内の古いマクロでよく見かけるVisual Basicの成績が27.5%から89.4%へ上がっています。言語の壁そのものが、静かに低くなってきた。

ただしOpenAI自身が、本番のソフトに使うには専門家の確認と、その会社の業務ルールに沿った検証が要ると釘を刺しています。ここが今日の肝です。なぜ古いコードが難物かというと、手順書が欠けていたり、作った人が会社を去っていたり、大事な決まりがコードの中にしか書かれていなかったりするから、と発表は説明しています。つまり、読みにくさの正体は言語そのものより、失われた文脈のほうにある。

で、あなたの会社はどうすればいいか。RASHINの見立てでは、今日やることはAIを動かすことではありません。「壊してはいけない計算」を人の言葉で書き出すことです。発表の中に、COBOLは小数の端数をそのまま切り捨てる、という例が出てきます。移し替えたコードが気をきかせて四捨五入すると、エラーは出ないのに請求額が変わる。動いたのに、間違っている。この手の落とし穴は、言語の問題ではなく、コードの中にだけ残った「社内の決まり」の問題です。

その決まりは、辞めた人の頭の中か、コードの奥にしか残っていない。AIが言語を読めるようになるほど、次に効いてくるのは「何を守るべきか」をこちらが言葉にできているかどうか、と考えられます。道具が賢くなる前に、我々の側の宿題が先に見えてくる、というわけです。

試してみるなら

手元に古いマクロや社内ツールのコードがあれば、一部でいいのでChatGPTに貼って、こう頼んでみてください。

「このコードが何をしているか、一行ずつ日本語で説明してください。特に、金額の丸め方・端数の処理・例外のときの動きがあれば、どんなルールか箇条書きにしてください。」

返ってきた箇条書きを、そのまま「この仕組みの決まりごと」というメモにする。中身が読めなくても、何を守っているかの一覧ができます。コードが長いときは、まず「請求額を計算している部分」だけを渡すと、返事が読みやすくなります。無料の範囲で試せます。

つまずきの先回り

  • AIの説明や書き換えが「動いた」ことと、「正しい」ことは別です。発表の97.9%は試験の中の数字で、あなたの会社の仕組みに当てはめた保証ではありません。古い仕組みと同じ入力で同じ答えが出るかを、実際の数字で突き合わせてください。
  • 今回うまくいったのは開発者向けのAPI(プログラムから呼び出す窓口)という使い方での話です。ChatGPTの画面を一度押せば古いシステムが新しくなる、という段ではまだありません。社内ツールの「説明」までが、今日その場でできる範囲です。
  • いちばん危ないのは、手順書もコードの注釈も無く、作った人もいない仕組みです。AIに読ませる前に、せめて「この処理は何のため」を一行添えておくと、後の確認がぐっと楽になります。

いきなり作り直さなくていい。今日できるのは、古い仕組みを一つ選んで、「これだけは変わると困る」という点を三つ書き出すこと。それだけで、人に頼むときも、AIに頼むときも、話が早くなります。

出典(一次情報):Advancing coding in low‑resource programming languages(OpenAI)