店の奥で、鶏肉を常温にどれくらい置いたら危ないのか、AIに聞いたことはないだろうか。食中毒を出したくない、それだけの用事だった。なのに返ってきたのは「その内容にはお答えできません」の一行。こちらは何も危ないことを聞いていない。それなのに、門前払いされた気分になる。この「真っ当な質問なのに断られる」は、体や健康、食べ物の話でよく起きる。
その断りすぎを、Anthropicが調整した。8月7日、同社は Claude の一種である Fable 5 で、生物学まわりの断りを約85%減らしたと発表した。ここでいう断りとは、AIが答えを避けて力の弱い別モデルへ話を回すこと(発表ではfallbackと呼ぶ)を指す。検査結果の読み方、症状の意味、学びなおしの生物。こうした真っ当な用事まで巻き込んで止めていた網を、細かく編み直したという。
で、うちの会社はどうすればいい。つくばには、飲食の人も、整体や薬局の人も、畑を持つ人もいる。体や食べ物に近い仕事ほど、AIに正当なことを聞いて断られる場面は多かった。今回の見直しで、これまで諦めていた質問が、もう一度通るようになると考えられる。大事なのは、断られたとき、あなたの聞き方が疑わしかったとは限らない、ということだ。機械が念のため広めに止めていて、その巻き添えになっただけのことも多い。網が細くなった今なら、同じ質問を出し直す価値はある。
具体で言えばこうだ。デイサービスの職員が、高齢者が夏に気をつける脱水の見分け方を下調べしたい。整体院で、腰の痛みがどこまで続いたら受診をすすめるか、その線引きを言葉にしたい。畑で、ある農薬をまいたあと収穫まで何日あければよいか、考え方を確かめたい。どれも後ろ暗いところのない、日々の仕事の用事だ。それでも、体や薬や生きものの言葉が並ぶだけで、これまでは網に引っかかりやすかった。今回、その引っかかりが減ると同社は言う。
もうひとつ、覚えておくと楽になることがある。AIが断るのは、あなたを罰したいからではない。危ないことに使われるのを避けたい、その一心で広めに網をかけていた結果だ。だから断られても落ち込む必要はない。仕組みの都合として受け止めて、聞き方を少し変えればいい。
試してみるなら
断られたくない質問ほど、目的と立場を先に置くと通りやすい。たとえば、こう入力してみてください。「私は小さな飲食店を営んでいます。食品衛生の観点から、鶏肉を常温で置いてよい時間の目安を、家庭や小規模店向けにやさしく教えてください」。仕事の理由と、危ないことには使わない立場が最初に伝わると、AIは身構えにくくなる。
介護や整体の現場なら、こう頼むのもいい。「デイサービスで働いています。利用者への一般的な注意として、高齢者が夏に気をつける脱水の見分け方を、専門用語をかみくだいて教えてください」。誰のための、どんな場面の話かを最初に置くほど、AIは安心して答えに踏み込む。
それでも止まったら、「一般向けの安全な範囲で構いません」と一言足して出し直す。健康の相談なら、文の頭に「これは受診の代わりではなく、下調べです」と添えると話が進みやすい。聞きたいことは変えず、まわりに一行の事情を足す。これだけで通り方が変わる。
つまずきの先回り
- これは Claude の話。ChatGPT や Gemini は断る基準がそれぞれ別で、同じ質問でも反応が違う。ひとつで止まっても、別のAIなら通ることがある。逆もある。
- 危ない使い道に近い領域(ウイルスや毒物の設計など)は、今も止まる。そこは今回減らした対象の外だと同社も書いている。ふつうの商売の質問がここに当たることは、まずない。
- 効き方は使う場所で差がある。ふだんのブラウザのClaude(claude.ai)では断りが大きく減り、開発向けの画面では減り幅が小さいという。事務仕事で使うなら、恩恵は大きいほうだ。
- 断られても、あなたが悪いわけではない。まちがって止めること(過検知)は起きる。言い方を変えるか、日を置いてもう一度で足りることが多い。一度で諦めない。
明日、過去に一度断られて、そのまま諦めた真っ当な質問を、ひとつだけ思い出してほしい。頭に目的の一行を足して、もう一度だけ出してみる。今日はそれで十分だ。