夕方、見積のメールを一本書く前に、ちょっとした言い回しをChatGPTに聞く。そういう使い方をしている経営者は多い。有料は入れず、無料のまま、思いついたときだけ開く。便利だけれど、途中で「今日はここまで」と止められることもあって、どこか遠慮しながら使う道具でもある。
そのChatGPTが、8月6日に中身を入れ替えた。OpenAIの発表によると、無料ユーザーが標準で使うモデルが GPT-5.6 Luna に変わり、文字だけのやり取りは回数の上限がなくなる。難しい問いのときに、時間をかけて考えさせる「Think」ボタンも加わる。有料の Plus と Pro には、答えにどれだけ手をかけるかを選ぶスライダー(つまみ)が増えた。詳しくはOpenAIの案内にある。
で、うちの会社はどうすればいいか。難しく構えなくていい。いつも開いているあの画面が、静かに新しいエンジンに載り替えた。そう思えば近い。
一つ目の変化は、回数の上限がゆるむこと。これまで「あと何回聞けるか」を気にして質問をためていた人は、その遠慮を一つ手放せる。メールの下書き、言い回しの確認、短い調べ物。細切れに何度も聞く使い方こそ、上限がいちばん邪魔をしていた場面だ。そこが軽くなる。
二つ目は「Think」ボタン。ふだんの短い質問はそのまま送り、込み入った相談のときだけ押す。押すと、答えを急がずに少し長く考えてから返してくる。契約書の一文の意味を確かめたい、いくつかの条件を並べて整理したい。そういう一呼吸ほしい問いのための、待合室だと考えられます。
OpenAIは、日付や数字、決まりごとが絡む問いでの取り違えを減らすよう調整した、と説明している。ただ、間違いがなくなるわけではない。数字や社名は、これまで通り自分の目で一度受け止める。そこは変わらない。むしろ答えが速く整って見えるぶん、確かめる側の落ち着きが要る。
この入れ替えで得をするのは、たぶん有料を入れていない会社のほうだ。無料のまま、定休日の問い合わせへの返信や、値上げの案内文の下書きに毎日ちょっとずつ使う。そういう細切れの使い方は、これまで回数の壁にいちばん当たっていた。その壁が下がる。有料の Plus と Pro を使っている会社にとっては、スライダーがひとつの目安になる。急ぎの一言は低いまま、腰を据えて考えたい相談は上げる。同じ道具の中に、速さと深さの二段が並んだ、と受け取ればいい。
試してみるなら
- 無料のChatGPTをいつも通り開き、ふだんの調べ物を一つ聞く。難しめの問いに変わったと感じたら、入力欄のそばにある「Think」ボタンを押してから送る。急ぎと熟考を、同じ画面で押し分ける感覚をつかむ。
- 下書きを頼むときは、丸投げより条件を添える。たとえば「取引先へのお詫びメールの下書きを作ってください。相手は長年の仕入先、遅れたのは納品が二日、堅すぎない敬語で、200字ほどで」と入力してみてください。条件が細かいほど、あとで直す手間が減る。
- Plus か Pro を使っているなら、新しいスライダーを低いままで短い質問に、高く上げて資料の下調べや文章づくりに、と一度ずつ試す。同じ質問で戻ってくる答えの厚みの違いが、使い分けの目安になる。
つまずきの先回り
- 切り替えは今日いっせいに、ではない。発表では無料と Go 向けは今週から順に標準モデルが変わり、回数の上限がゆるむのと「Think」ボタンは来週から、とある。今日開いて何も変わっていなくても、故障ではない。数日待つ。
- 「回数無制限」は文字のやり取りだけの話。ファイルの読み込みや画像、その他の道具には、これまで通り上限が残る。PDFを何十枚も続けて読ませる用途が、急に開くわけではない。
- スライダーは Plus と Pro、「Think」ボタンは無料側の入口。自分がどちらの画面にいるかで、探す場所が変わる。見当たらないときは、まず今のプランを確かめる。
- 答えが速く整って見えても、それが正しさの保証ではない。金額、日付、社名。この三つだけは、送信の前にもう一度自分で当たる癖を残しておく。
新しいエンジンが載っても、ハンドルを握るのはこちらだ。明日できることは小さい。上限を気にしてためていた質問を、一つ、遠慮なくぶつけてみる。それだけで、この入れ替えの意味は手のひらで確かめられる。
出典(一次情報):ChatGPTのGPT-5.6 Sol改善と無料ユーザー向けGPT-5.6 Luna拡大(OpenAI公式)