昼休みの事務所。社員が無料のChatGPTに何か打ち込んでいる。見積もりの言い回しを直したり、返信メールの下書きを整えたり。多くの会社で、AIはこうして私物のアカウントからそっと業務に入り込んでいる。今日から、その画面に見慣れないものが一つ増えるかもしれない。
2026年8月11日、OpenAIがChatGPTでの広告を、日本を含む五つの国と地域で始めた(発表)。対象は、ログインしている成人で、FreeとGoのプランを使う人。Plus、Pro、Business、Enterprise、Educationの各プランでは広告は出ない。つまり無料や低価格の席に座っている人の画面にだけ、スポンサー付きの枠が現れる。
まず落ち着いていい。広告はChatGPTの回答そのものを変えない、とOpenAIは書いている。回答は利用者に一番役立つ内容で最適化され、広告が出るときはスポンサー提供と明示され、ふつうの回答とは見た目で区別される。だから「広告主に都合のいい答えを返される」という心配は、発表を読むかぎり当たらない。
もう一つ気になるのは、会話の中身だ。業務の相談をAIに打ち込んでいる会社は多い。ここもOpenAIは、広告主はチャットや履歴、メモリ、個人情報にアクセスできないと明言している。広告主が受け取るのは、表示回数やクリック数といった集計だけ。どの広告を出すかは、会話のトピックや過去のチャット、広告への反応と照らして決まる。テスト期間中は、健康やメンタルヘルス、政治といった機微な話題では広告を出さない、とも書かれている。
たとえば、と発表は具体を一つ挙げている。レシピを調べていれば、ミールキットや食料品宅配の広告が表示されることがある、と。裏を返せば、仕事の調べ物をしていれば、それに近い広告が出る可能性はある。ただし現れるのはスポンサー枠であって、答えの中身ではない。この二つを分けて捉えておくと、社員に説明するときに言葉が濁らずに済む。広告は答えを曲げない、ただ枠として横に立つだけ、と伝えれば足りる。
では、あなたの会社は何を決めればいいか。RASHINの見立てでは、判断は一つだけだ。社員が業務で使っているのは、無料の席か、有料の席か。無料なら広告は出る。会社としてBusinessなどの有料プランで統一していれば、そもそも広告は現れない。私物の無料アカウントが業務にまぎれ込んでいる会社ほど、この話は効いてくると考えられます。有料に上げるほどではない、でも広告は避けたい。そんなときは、無料のまま広告をオプトアウトする道もある。ただし引き換えに、1日に送れる無料メッセージの数は減る。どれを取るかは、使い方の重さで決めればいい。
明日、朝礼のついでに一言だけ聞いてみる。「ChatGPT、無料で使ってる人いる?」手が挙がったら、それが今日の出発点だ。
試してみるなら
- 無料版を使う社員がいるなら、ChatGPTにこう打ち込んでもらう。「無料版のChatGPTに広告が表示されるようになりました。中小企業の社員が業務で使うときの注意点を、三行の箇条書きでまとめてください」と入力してみてください。自社の言葉で、注意書きの下地ができる。
- 広告を出したくない無料利用者は、広告をオプトアウトできる。ただし引き換えに、1日あたりの無料メッセージ数は減る。回数をよく使う人か、広告が気になる人か、本人に選んでもらう。
- 表示された広告は一つずつ非表示にしたり、なぜ出たのかを確かめたり、広告の個人設定から管理できる。まずは一度、設定を開いて何を変えられるか眺めてみる。
つまずきの先回り
- プランで扱いが違う。広告が出るのはFreeとGoだけで、Plus、Pro、Business、Enterprise、Educationでは出ない。「自社にも広告が来た」と慌てる前に、誰がどの席に座っているかを確かめる。
- オプトアウトはただではない。無料プランで広告を切ると、1日に送れる無料メッセージの数が減る。使い倒している社員ほど、この目減りは地味に痛い。
- 「会話が広告主に流れる」は誤解になりやすい。広告主が受け取るのは集計値だけで、チャットの中身は渡らない。ここを取り違えると、必要以上に使うのを怖がってしまう。
- 日本はもう始まっている。「まだ先の話」ではない。2026年8月11日の時点で、日本は提供開始ずみだ。
出典(一次情報):ChatGPT での広告のテスト(OpenAI公式)