介護・福祉のAI活用
介護・福祉で、AIにできること
介護の仕事の本体は、人が人に触れる時間です。ところが現場の実感としては、その時間が記録と書類に削られている。AIが介護でできることは、突き詰めると「触れる時間を、書く時間から取り返すこと」です。
このページでは、国内で報告されている実例を出どころ付きで紹介したうえで、その中の「数名〜数十名の事業所でも使える部分」がどこかを翻訳します。
実例①
記録を、歩きながら声で済ませる
介護記録は、ケアが終わったあとに詰所へ戻って書くのが普通でした。これをスマートフォンへの音声入力に変える製品が広がっています。介護記録ソフトの提供元は、ある特別養護老人ホームで音声入力の導入により記録にかかる時間が平均で約80%削減されたと報告しています。
出典: care-viewer.com
国も同じ方向を向いています。厚生労働省は「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」(令和7年4月)で、ケアプランやサービス担当者会議の議事録の原案作成に生成AIを活用することが業務効率化につながると明記しました。記録と書類へのAI活用は、もう「先進的な試み」ではなく、国が推す標準の方向です。
出典: mdsol.co.jp
実例②
夜の見守りを、センサーとAIが手伝う
夜勤の巡視は、職員の負担が一番重い仕事のひとつです。沖縄の特別養護老人ホーム与勝の里では、姿勢解析AIを使った見守りシステムの導入で転倒事故を48%削減した事例が紹介されています。東京の西東京ケアセンターそよ風では、見守りセンサーで夜間の巡視回数を40%削減したと報告されています。巡視が減った分、必要な人にすぐ駆けつけられる、という考え方です。
出典: neural-opt.com
実例③
送迎計画とシフトを、AIが組む
デイサービスの送迎計画は、ベテランの頭の中にしかない、属人化の代表例です。神戸の塩屋さくら苑では、送迎計画システムの導入で計画作成時間を90%削減し、ベテラン1名に頼っていた作成業務を複数人でこなせるようになった事例が紹介されています。職種別の配置基準が絡む複雑なシフト作成に生成AIを使い、作成時間を大きく削減した事例も報告されています。
出典: neural-opt.com
実例④
そして、書類仕事。小さな事業所ほどここから
①〜③のうち、②と③は専用の機器やシステムの契約が前提です。でも、いま一番手軽に効くのは、月々数千円の生成AIでできる文章仕事です。
- ケアプランや計画書の「たたき台」づくり(仕上げと責任は専門職)
- 担当者会議やカンファレンスの議事録の原案
- ご家族への連絡文・お便り・行事案内の下書き
- ヒヤリハット報告の文章化の補助
訪問看護の現場では、計画書の作成に1人あたり30分、文章が苦手なスタッフだと1時間かかっていたものを、生成AIで大幅に短縮した事例が紹介されています。書くのが苦手な人ほど、恩恵が大きい領域です。
つくばの介護・福祉に翻訳すると
つくばは若い街に見えますが、それは中心部の話です。周辺地区の高齢化は着実に進んでいて、市内と近隣には小規模のデイサービス、訪問介護、グループホームがたくさんあります。数名で回している事業所で、②の見守り機器や③の送迎システムにいきなり投資するのは重い。
順番のおすすめは④と①です。まず月数千円の生成AIで、計画書のたたき台と家族向けの文章から。記録の音声入力は、いま使っている介護ソフトに機能が付いていないか確認するのが先です(すでに持っている機能を使っていないだけ、という事業所は珍しくありません)。
ひとつ、はっきり線を引いておきます。利用者さんの名前や病状を、そのまま無料のAIに入力してはいけません。名前を伏せる、業務データを学習に使わない設定にする。この約束事を決めてから始めるのが、遠回りに見えて一番の近道です。
そして、上の事例の数字はそれぞれの施設での報告値です。あなたの事業所で同じ数字が出るとは、誰にも約束できません。約束する人がいたら、疑ってください。
よくある質問
Q. 職員10人のデイサービスでも、AIは関係ありますか。
あります。最初の出番は見守り機器ではなく、計画書・議事録・お便りの下書きです。人数が少ないほど、書類が特定の人に集中しているはずで、そこが一番効きます。
Q. 見守りカメラやセンサーは、勝手に付けていいのですか。
利用者さんとご家族への説明と同意が先です。導入事例の解説でも、同意取得の重要性が指摘されています。機械の話の前に、説明の仕方から一緒に整理できます。
Q. ケアプランをAIに作らせて、大丈夫ですか。
AIが作るのは「たたき台」までです。アセスメントと最終判断はケアマネジャー・専門職の仕事で、そこは変わりません。国の中間とりまとめも「原案作成」への活用という書き方をしています。
最初の一歩
先月、事務作業で一番遅くまで残った日を思い出してください。その日に書いていた書類の名前を3つ、書き出してみる。それがAIに最初に渡す候補です。
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→ 関連記事: 「AIが苦手なこと」 「時間の棚卸し」
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